躍動した“サニブラウン世代”の選手たち 日本を飛び越え、世界の舞台で飛躍を誓う

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 陸上の日本選手権最終日が30日、福岡・博多の森陸上競技場で行われた。男子200メートル決勝では、サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)が20秒35(向かい風1.3メートル)で優勝。28日の100メートルと合わせて、2年ぶり2度目の2冠に輝いた。男子走幅跳では橋岡優輝(日本大)が7メートル98センチ(向かい風1.1メートル)で3連覇を果たし、世界選手権(9月27日開幕/カタール・ドーハ)の代表に内定した。

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サニブラウンは「よく走り抜いたかな」

サニブラウンは100、200メートルを制し、2冠に輝いた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2年ぶりに2冠を達成したサニブラウンは「疲れているなという感じはしたけれど、よく走り抜いたかな」と戦いを総括した。この日の200メートルでは、強い雨の中でも持ち前のパワフルな加速を見せて1位でフィニッシュ。ただ、連日の疲労が蓄積したためか、「前半は予選よりいけたと思うけれど、後半は(力が)抜けてしまった」と好調時の終盤の伸びは見せられず。向かい風の影響もあり、19秒台には届かなかった。

 それでも「違うものに挑戦し続けて、力を証明するいい機会になった」と胸を張る。過去に100、200メートルでの2冠を2度達成したのは3人目。2種目で世界選手権の代表も内定し、米国で培った実力を日本のファンに見せるには十分すぎる4日間だった。

 戦いを見守ったフロリダ大のアントワン・ライトコーチも「ハキームはやるべきことをやっている。自分がなにをすべきか分かっているし、彼はいいパフォーマンスを見せた」と、その成長ぶりに太鼓判を押す。今季の最大の目標となる世界陸上でのメダル獲得については「われわれにはそのためのプランがあり、やるべきことに集中し続ける必要がある。ハキームが強くなるために、何をすべきかは分かっている」と宣言。悲願に向けて、フロリダ大も最大限のバックアップをしていく。

走幅跳の橋岡、棒高跳の江島も活躍

男子走幅跳の第一人者・橋岡優輝。優勝を飾り、世界選手権代表に内定した 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 4日間にわたって会場を沸かせた短距離のヒーローだけでなく、今大会は同い年の“サニブラウン世代”が躍動した舞台でもあった。男子走幅跳では、橋岡が1回目の試技でいきなり7メートル98センチをマーク。結果的にこの試技で優勝を勝ち取った形になり、3連覇を決めてみせた。4月のアジア陸上競技選手権大会で8メートル22センチの大ジャンプを決め、すでに世界選手権の参加標準記録(8メートル17センチ)を超えていたため、この優勝で代表に内定した。それでも本人は「このコンディションでも8メートルを跳べないとダメ。ふがいなかった」と不満顔。世界選手権でのメダル獲得に向け、自らに課すハードルは高い。

 また、29日の男子棒高跳は、橋岡と同じ日本大の江島雅紀が5メートル61センチで初優勝。日大のコーチでもあり、江島にとって「僕の理想像」と語る日本記録保持者の澤野大地(富士通)との直接対決に勝利した。「自分が棒高跳を始めたきっかけになったのが、昔の世界選手権で澤野さんの跳躍を見たことでした。一回りも年齢が違うのに、こうしてお互いベストな状態で戦えたことが誇りです」。5メートル71センチの試技には失敗し、現段階で世界選手権の切符はつかめなかったが、憧れとし続けた存在に勝てたことが何よりの財産になった。

互いに刺激し、励まし合って世界の表彰台へ

江島(左)は師匠の澤野(右)を破り、涙の優勝を果たした 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 3人は同い年で、サニブラウンと江島は同じ1990年3月6日に生まれた。全員、日本陸上競技連盟が次世代の競技者を育成するダイヤモンドアスリートに選ばれていることもあり、互いに刺激し合って成長してきた。

 江島は「2人と違ってまだ僕は全日本で勝っていなかった。まずは優勝できてよかった」と胸をなでおろした。また、3連覇を果たした橋岡に対して、ミックスゾーンでサニブラウンは肩を抱いて祝福。橋岡は「普段から仲はいいです。ダイヤモンドアスリートに選ばれている選手が活躍してますし、自分も負けられないと思っていた」と笑顔で語った。

 江島は7月8日からイタリア・ナポリで行われるユニバーシアード競技大会で、改めて世界選手権の参加標準記録超え(5メートル71センチ)を目指す。クリアできれば文句無しで内定を得られるだけに、何としても超えたいところだ。3カ月後のドーハ、そして1年後に迫った東京五輪に向け、サニブラウンを中心とした新たな世代が世界を驚かすことに期待したい。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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