- 西尾典文
- 2019年6月26日(水) 17:00
明治大の38年ぶり6度目の優勝で幕を閉じた全日本大学野球選手権。大会の主役は間違いなくMVPに輝いた森下暢仁(もりした・まさと)だった。
準々決勝の東洋大戦では7安打を許しながらも完封。決勝でも3試合連続の逆転勝ちで勢いに乗る佛教大打線を寄せ付けず。最終回に1点は許したものの10奪三振、1失点で完投勝利と見事なピッチングを見せた。
素質の高さは折り紙付き、4年春で覚醒

森下は高校(大分商)3年時、その年の甲子園に出場していない選手から、ただひとり高校日本代表に選出。素質の高さは早くから評価されてきた投手である。
しかし、ここまでの大学生活は決して順風満帆だったわけではない。
入学直後の1年春の新人戦で、試合中に右肘を骨折。その秋はリリーフでわずか1試合の登板に終わっている。2年春から先発を任せられたものの、秋には肩を痛めて再び戦線を離脱。3年生となった昨年は、ようやく年間通じてマウンドを守ったものの、昨秋までの通算成績は9勝8敗。持っている能力からするとかなり物足りないものだった。
その森下が大きく変わったのがこの春からだ。
昨年までとは明らかにボールの力強さが増し、オープン戦から毎試合150キロを超えるスピードをマーク。リーグ戦でも4勝1敗、防御率2.03という見事な成績を残し、チームを優勝に導くとともに自身初となるベストナインも満票で受賞したのだ。
プロで例えると楽天・岸のイメージ
(撮影:スポーツナビ)
ここで、森下のフォームについて見てみよう。
身長は180センチと最近の投手の中では決して大柄ではないが、長いリーチを柔らかく使える腕の振りが最大の特長だ。少し体を反らせるようにして右肘を高く上げ、真上から振り下ろすためボールの角度も申し分ない。軸足でしっかり立てるようになり、抜けるボールは明らかに少なくなった。
プロの現役投手では岸孝之(東北楽天)にイメージが近く、110キロ程度の緩い大きなカーブを操るというピッチングスタイルの面でも共通している。
ちなみに、高校入学当時は主にショートとしてプレー。野手としての能力も高く、フィールディングのうまさも長所だ。プロでも即戦力として期待できるというのは、こういった投げる以外のプレーのレベルの高さも影響しているだろう。