攻撃の手数と守備の共通理解に欠けた日本 エクアドル戦で再認識した課題
アジア勢が「お客さん」ではないことを示すためにも
日本、エクアドル共に勝ち点3を積み上げれば、ノックアウトステージにすべり込むことができる状況だった 【写真:ロイター/アフロ】
「たとえばブラジルがアジアカップに出場するとしたら、どう思うか?」
6月24日(現地時間、以下同)にベロオリゾンテで行われる、コパ・アメリカのグループステージ第3戦、日本対エクアドル。その前日会見で日本代表の森保一監督に対し、南米のメディアからこのような質問が相次いだ。ここでいう「批判」は、きちんと腑分けする必要がある。パラグアイ代表のエドゥアルド・ベリッソ監督は主催者であるCONMEBOL(南米サッカー連盟)に向けたものであったのに対し、ベネズエラ代表のラファエル・ドゥダメル監督は「U−23の選手を多く連れてきて大会を軽視している」日本の姿勢に苦言を呈している。
もちろん、今大会に参加している代表チームのすべての監督が、日本とカタールの参加に否定的というわけではない。3月に韓国と日本に遠征したボリビア代表のエドゥアルド・ビジェガス監督は「彼らのダイナミックさに驚かされた」とポジティブな感想を述べているし、エクアドル代表のエルナン・ダリオ・ゴメス監督も「(アジア勢の参加は)いいことだと思う。南米には10チームしかなく、内輪だけで試合をしていても仕方ない」というコメントを残している。ようするに同じ南米でも、さまざまな考え方があるということだ。
日本がベストでないメンバーで今大会に臨んでいる理由については、すでにあちこちで書かれていることなので割愛する。森保監督が言うところの「最強ではないが監督として考えられるベストの選手」で今大会に挑んでいる日本代表。コパ・アメリカのグループステージを突破することは、自分たちの経験値をさらに高めるだけでなく、アジア勢が単なる「お客さん」ではないことを南米諸国に示すという意味でも大きな意味を持つ。
あらためて、グループステージ突破の条件を整理しておこう。2試合を終えて、3位の日本は勝ち点1の得失点差−4、4位のエクアドルは勝ち点0の−5。他グループの3位と比べると、ペルーが勝ち点4の得失点差−3、パラグアイが勝ち点2の得失点差−1となっている。つまり日本もエクアドルも、勝ち点3を積み重ねれば、ノックアウトステージへの最後の1枠に滑り込むことができるのである。これほど分かりやすい状況はない。とにかく、目の前の相手に勝つしかない。それだけだ。
VARで先制するもオフサイドで決勝ゴールが幻に
中島のゴールで先制した日本だったが、同点を許し1−1で試合終了。グループステージ敗退に終わった 【写真:ロイター/アフロ】
≪日本代表の7つの課題≫
(1)各ポジションの世代交代は進んでいるか?
(2)チーム内の競争は健全に働いているか?
(3)監督の考えるコンセプトは浸透しているか?
(4)攻撃面でのバリエーションは増えているか?
(5)守備面での共通理解は進んでいるか?
(6)監督の采配や選手交代は的確か?
(7)試合状況や実力差に応じた戦いができているか?
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会場のエスタディオ・ミネイロンのピッチに立つ、日本のスターティングイレブンは以下のとおり。GK川島永嗣。DFは右から岩田智輝、植田直通、冨安健洋、杉岡大暉。中盤はボランチに柴崎岳と板倉滉、右に三好康児、左に中島翔哉、トップ下に久保建英。そしてワントップに岡崎慎司。森保監督が「ウルグアイ戦がベース」と前日に語ったとおりの布陣である。唯一の変更は、安部裕葵の代わりに久保が入ったこと。ウルグアイ戦では7分のみの出場だったので、久保はこの中で最もフレッシュな状態だ。
先制したのは日本だった。前半15分、中島からのスルーパスを受けた岡崎がボールに触る直前、エクアドルのGKアレクサンデル・ドミンゲスが飛び出してクリア。しかしそのボールを中島が拾い、無人のゴールにループ気味のシュートを放つ。この時、主審は(岡崎の)オフサイドのジェスチャーを見せたものの、その後VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定によって中島のゴールは認められた。しかし35分、ペナルティーエリア付近でのロマーリオ・イバーラのシュートに対し、川島がセーブしたところをアンヘル・メナに決められてしまう。前半は1−1で終了。
ドローのままでは、日本もエクアドルもノックアウトステージには進めない。後半はさらにアグレッシブな展開が予想されたが、ハーフタイムでエクアドルが中盤の構成を変えてくると、とたんにゲームは膠着(こうちゃく)状態となる。これを打開すべく、日本ベンチは後半21分と37分に動く。まず岡崎を下げてスピードのある上田綺世、さらに疲れの見える三好に代えて安部を投入。これで前線にパスがスムーズに回ると期待したが、ことごとくエクアドルの網に引っかかり、もどかしいことこの上ない。
ジリジリした展開が続く中、後半43分に森保監督は最後のカードを切る。板倉OUTで前田大然IN。前田と上田が2トップを組む形になった。その直後、久保からのスルーパスに抜け出した前田がシュート。GKドミンゲスがはじいたボールに上田が反応するも、シュートは大きく枠を外れる。さらに45+4分、久保のシュートがネットを揺らしたかに見えたが、これはオフサイドの判定。試合はそのまま1−1で終了し、ブラジルが待つポルトアレグレの準々決勝には、日本でもエクアドルでもなく、パラグアイが赴くこととなった。