久保のA代表デビューと初の3バック導入 2連戦で得た収穫をコパへつなげられるか

宇都宮徹壱

「つかみづらさ」を感じていた6月の2連戦

6月の2連戦では、久保のA代表デビューに注目が集まった 【写真:つのだよしお/アフロ】

「デビューの可能性はあります。メンバーには確実に入ると思いますし、そのあとは(試合の)流れで決めたいと思いますが、これまでの練習を見る限り調子も間違いなくいいですし、このグループの中に入っても間違いなく力を発揮できることを練習でも見せています。何が起こるか分からないですが、メンバーには間違いなく入って、プレーする機会はあるかと思います」

 6月9日、ひとめぼれスタジアム宮城で行われるキリンチャレンジカップ、対エルサルバドル戦の前日会見。日本代表の森保一監督が「間違いなく」を3回使って言及したのが、18歳の新鋭、久保建英のA代表デビューについてである。4日前に豊田スタジアムで行われたトリニダード・トバゴ戦では、招集メンバー27名中ベンチ入りは23名となっていたため、久保は川島永嗣や岡崎慎司や中山雄太とともにスタンド観戦することになった。しかし今回はようやく、デビューの可能性について指揮官からのお墨付きが出たのである。

 久保のベンチ入りが明言されたことで、会見場は奇妙な安堵(あんど)感に包まれた。このエルサルバドル戦で、ようやく「話題性」が担保されたからだ。実のところ取材する側は、この6月の2連戦にある種の「つかみづらさ」を感じていた。発足から間もなく1年を迎える現体制に、もはや新鮮さはない。準優勝に終わった1月のアジアカップは、それほど深刻な課題が露呈したわけではない(少なくとも表向きには)。直近にコパ・アメリカを控えているが、この2連戦から15名が入れ替わるので連続性があるわけでもない。

 そういえばトリニダード・トバゴ戦の前日会見では、森保監督への質問は1つしかなく、わずか4分半で終了となってしまった。この時点では、とりたてて指揮官に質問すべきことが見つからなかったからだろう。かくしてメディアの多くは、久保の「18歳デビュー」や「代表最年少ゴール記録更新」、さらには「令和初ゴール」といったものにすがらざるを得なくなる。しかし前述のとおり、トリニダード・トバゴ戦で久保の出番はなく、試合自体もスコアレスドローに終わって「令和初ゴール」もならなかった。

 今回の2試合で、図らずもクローズアップされたのが、森保監督がA代表で初めて導入した3バックシステムである。先のアジアカップでは結果が求められ、コパ・アメリカで対戦するのは強豪ぞろい。その後2カ月は代表の活動はなく、9月になればワールドカップ(W杯)アジア予選がスタートする。そう考えると、戦術的なオプションとしての3バックを試すタイミングは、この2試合しかなかった。こうした事情にも留意しながら、まずは6月5日のトリニダード・トバゴ戦から振り返ることにしたい。

初めて3バックを試すも無得点に終わったトリニダード・トバゴ戦

トリニダード・トバゴ戦では3バックを初導入したが、ゴールは奪えず 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 この試合のスターティングイレブンは、以下のとおり。GKシュミット・ダニエル。DFは昌子源をセンターに冨安健洋と畠中槙之輔の3バック。ワイドは右に酒井宏樹、左に長友佑都。ボランチには、キャプテンマークを巻いた柴崎岳と守田英正。そしてFWはシャドーに堂安律と中島翔哉、そしてセンターに大迫勇也。必然的にトップ下のポジションがなくなるため、南野拓実はベンチスタートとなった。対するトリニダード・トバゴは、来日したのは18人のみ。長旅のため、コンディションもあまり良い状態ではなさそうだ。

 3バックシステムの利点について、森保監督はどのように考えているのだろうか。ポイントはウイングバック。「守備の時は(相手の)スペースを消せるし、攻撃では高い位置で幅を持てるので、相手のディフェンスを分散させることができる」と指揮官は語っている。実際には、長友と酒井が最終ラインに吸収される場面は限られ、もっぱら高い位置を保ちながら大迫や堂安にクロスを供給。また中島も攻撃の起点となりながら、チーム最多となる7本のシュートを放って、相手に脅威を与え続けた。

 ところがこの日は、トリニダード・トバゴの守護神、マービン・フィリップが大当たり。日本の際どいシュートやクロスを何度も弾き返し、そのたびにスタンドは大きなため息に包まれた。その間、日本のベンチはさまざまなテコ入れを試みる。後半16分から17分にかけて、守田と酒井を下げて小林祐希と室屋成を投入。26分には中島と堂安に代えて、南野と伊東純也。さらに34分には長友に代えて原口元気がピッチに送り込まれる。メンバーが変わるたびに、攻撃に新たなアクセントが生まれるものの、やはりゴールが遠い。

 トリニダード・トバゴのデニス・ローレンス監督は「日本はボール回しがうまく、(ピッチを)広く使いながら攻めてくるので、われわれは深く守って対応する他なかった」と語っている。しかも後半には、何人もの選手が足をつってしまうアクシデントに見舞われた。それでも最後まで集中を切らさず、日本の猛攻を失点ゼロで抑えることに成功。図らずも日本は、「相手が徹底して引いて守る」というW杯予選のシミュレーションを経験することとなった。

 もっとも森保監督自身は、この日の出来にポジティブな面を見いだしていた。オフェンスついては、前線に入るボールが増えたことで「相手が中に締めてきたところで今度は外を使う」攻撃ができたこと。ディフェンスについては「(センターバックの)畠中と冨安が持ち上がって、いい形で攻撃を仕掛けていく」形が見られたこと。その上でエルサルバドル戦では、再び3バックを試すことを前日会見で明言した。W杯予選を前に、3バックでもしっかり結果を出しておきたいという、指揮官の強い思いが透けて見える決断である。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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