Bリーグ2連覇の裏にあった名伯楽の葛藤 日本バスケ進化の鍵は現場の頭脳にあり
オン・ザ・コートルール改正の影響は?
「(Bリーグで)勝つことは難しく、2連覇はさらに大変だ」とルカHCは優勝を振り返る 【(C)B.LEAGUE】
2018−19シーズンのアルバルク東京はレギュラーシーズンを東地区3位で終えている。ワイルドカードからの勝ち上がりで、チャンピオンシップ(CS)は上位チームとのアウェー戦を強いられた。琉球ゴールデンキングスとのセミファイナルは「超アウェー」の第3戦を制する薄氷の勝ち上がりだった。ファイナルも中5日の千葉ジェッツに対して、中3日と不利な条件だった。
A東京はBリーグの強豪だが、他クラブを圧倒する戦力かと言えば違う。Bリーグは混戦状態で、トップクラブが横並び状態にあるからだ。ルカHCはこう言い切る。
「Bリーグは1チーム、2チームが支配するリーグではない。少なくとも4チーム、5チームが優勝してもおかしくない。なので勝つことは難しく、2連覇はさらに大変だ」
チームには開幕前、シーズン中といくつもの困難があった。一つの大きな変化が今季から行われたオン・ザ・コートルールの改正だ。ルカHCはこう説明する。
「昨シーズンは5番のアレックス・カークはプレータイムが平均約25分くらい。ブレンダン・レーンがサブで約15分とシェアできた。5番ポジションをローテーションできたので、1年間を通して速いペースでプレーできていた。ただし今シーズンはアレックスのプレーが平均約32分に伸びてしまった」
昨季のA東京は1人あたりのプレータイムを抑えて、密度を求めるスタイルだった。しかし今季はカークと竹内譲次、二番手外国籍選手の3人で5番(センター)と4番(パワーフォワード)を回すようになった。1人あたりの負荷が増え、また5番専任のカーク以外は4番と5番を兼任する起用になった。
ルカHCはその難しさをこう述べる。
「現代バスケットのビッグマンは、4番と5番で役割が違う。しかし今季のラインアップではアレックスと譲次、もう1人の計3人で4番と5番のローテーションをせざるを得なかった。ビッグマンのラインアップでうまいコンビネーションを作れず、チグハグしていたように感じる。そこが最大の困難だった」
複数の代表選手が所属するA東京
複数の代表選手が所属しており、「常にトップレベルの完成度に達していることは難しかった」という 【(C)B.LEAGUE】
周囲は、A東京にはいい選手がそろっていて、昨シーズンの積み上げもあるという目で見がちだ。しかしルカHCが求める完成レベルは高く、頂点到達には時間がかかる。休養、コンディション調整などに費やす時間も必要だ。リーグ戦の水曜開催、火水木に開催される代表の短期合宿があればチーム作りには時間が割けなくなる。
彼は言う。
「われわれのチームは日本代表の活動に影響を受ける。代表に常に3名、もしくは4名が参加していたからだ。だからフルメンバーが練習にそろうことはシーズンを通してなかなかなく、常にトップレベルの完成度に達していることは難しかった」
ルカHCは選手への要求をシンプルな内容に絞り、限られた時間の中でベターな結果を得ようとした。
「ポイントポイントに絞って『“ここだけ”は約束事を遂行する』といったことを各自に伝えていた。一つの例だが、ディフェンスのボールプレッシャーについては常に言っている。タフネス、インテンシティーも必ず伝えている。オフェンスならいいスペースでピック&ロールをすること。スピードを落とさず一つ一つの動きをすること。そして状況判断をしっかりやること――。ブレークの期間までなんとかつなぎ、我慢しながらそこへたどり着こうと選手に話していた」