「中国に勝てない何かがあると思った」 早田/伊藤組、準Vより敗戦が重く

月刊『卓球王国』

2人の怪物がこれからも立ちはだかる

18歳の孫穎莎と20歳の王曼イク。早田/伊藤組と同世代の2人が、これからも日本勢に立ちはだかるだろう 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 一方、初の個人戦世界タイトルをつかんだ中国ペア、18歳の孫穎莎と20歳の王曼イクの戦いぶりは見事だった。ともに世界選手権個人戦初出場、初の決勝の舞台でいきなり2ゲームを先行される苦しい展開も落ち着いて逆転勝ち。普通なら一気に呑まれてもおかしくない場面から、プレーの精度を増していった。

 ミスが目立ったチキータも中盤からはほとんどミスが消え、ラリーになれば左右を厳しく突いて動かし、決定打はフォアストレートを徹底。このコースに打たれたボールに、早田は最後まで対応できなかった。高い技術力に、それを生かしきる対応力と徹底した戦術、「次代のエース」と称されるだけのプレーを決勝の大舞台で発揮した。若き2人の怪物が、これから10年にわたって日本の前に立ちはだかる。

 日本は前回大会で5つのメダルを獲得も、今大会獲得したメダルは3つ。やはり、世界の舞台で勝ち続けることは容易ではない。特に男子は中国のみならず、各国の中堅選手が実力を伸ばしており、頭角を現してきた若手も多く、以前よりも争いは熾(し)烈になってきている。

 シングルスでは、注目を集めた張本智和(木下グループ)はベスト8決定戦で伏兵・安宰賢(韓国)に涙の敗戦。打倒・中国の1番手と目された伊藤は3回戦で孫穎莎に敗れた。大一番で勝ち切ることはの厳しさを改めて痛感したはずだ。とはいえ、張本、伊藤をはじめ、若い選手も多い日本代表。悔しさもをバネに成長していけるだけのタフさも時間も持ち合わせている。今大会の敗戦を大きなターニングポイントにしてほしい。

印象的だった劉詩ブンの言葉

若手が台頭するのは中国も同じ。その中で28歳のベテラン、劉詩ブンの言葉が印象に残る 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 大会全体を見ると、やはり中国は強かった。最終日の女子ダブルスのほか、男子シングルス決勝では馬龍が1961・63・65年大会の荘則棟(中国)以来の3連覇を達成するなどし、5種目を完全制覇。今大会の5種目での中国対他国選手の対戦成績は75勝1敗と実力をまざまざと見せつけた。男子シングルスで世界ランキング1位の樊振東を下した梁靖崑、男子ダブルスで王者に輝いた18歳・王楚欽、女子シングルス3位入賞の王曼イク、単複で伊藤を撃破した孫穎莎などニューカマーの活躍も光り、「王国健在」を印象付けた。

 その中で、女子シングルスで初優勝を果たした28歳の劉詩ブンの言葉が印象的だった。幼少期から天才少女と呼ばれ、2009年大会の女子シングルスで18歳にして銅メダル。女王の座もそう遠くないかと思われたが、優勝にはなかなか手が届かず、決勝でも過去に2度の敗戦。3度目の挑戦で、ついに世界一の称号を手にした。

「この瞬間を長く待っていた。私は優勝するに値する選手だと思っていましたが、それが少し遅かっただけ。夢のような瞬間ですね。私は5番目に選ばれた選手だった。チャンスを与えてくれたチーム、応援してくれた人たち、ファンに感謝したい」

 自分を信じ、諦めずボールを追いかけ続ける者だけが頂点にたどり着ける。ありきたりかもしれないが、10年の時をかけて頂に立った女王の言葉は、世界一を目指す道のりの険しさ、その称号の重みを物語っている。

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