石川/吉村組が対峙した“本気”の中国 高い個人技×ダブルス巧者のすごみ

月刊『卓球王国』

「これぞ中国卓球」高水準な個人技と見事な連携

許キン(右)と劉詩ブン、ともにすごみを感じさせる質の高いプレーを見せた 【写真:ロイター/アフロ】

 決勝はまさに「許キン無双」だった。フォアドライブの迫力は世界一の許キンだが、1球ごとに打球する選手が入れ替わるダブルスでは、次の打球までの時間的な余裕が増え、シングルス以上にフルスイングできる機会が増える。男子選手でも慄くそのボールを女子選手が対処するのは至難の業。準決勝では中国ペア同士の対戦となったが、女子選手離れしたプレーを見せる身長171センチの女王・丁寧も許キンのボールに驚くような仕草を見せていたが、決勝でも石川をことごとく吹き飛ばした。自分が強打できない場面でも、きっちりと相手の攻めを防いで劉詩ブンの得点をアシストするなど、ポイントゲッターもチャンスメイクも完璧にこなす、ダブルスのスペシャリストぶりを発揮した。

 混合ダブルスでは一般的に、体格やパワーに勝る男子選手のボールを、女子選手がいかに受けるかがポイントとなる。石川が許キンのボールに苦しんだのに対し、劉詩ブンは吉村のボールにしっかり対処。逆の打球順序でも、持ち前の高速両ハンドで吉村を押す場面もあった。台から少し離れた位置の許キン、台に近い位置の劉詩ブンと、プレー領域が異なるため、動きが重ならずにスムーズな連携も可能。中陣から許キンが強打で相手を押し込み、あまくなったボールを劉詩ブンが前陣でスピーディーに攻める、というコンビネーションも随所に見せた。

 15、17年大会と混合ダブルスには他国選手との国際ペアで出場していた中国。それ以前も、シングルスに出場する主力級ではない若手や中堅同士のペアを出場させるなど、混合ダブルスに力を入れている感はなかった。混合ダブルスが東京五輪から新たに種目として採用されたこともあり、今大会は国際ペアを取りやめ、男女とも主力選手同士のペアリングで挑んできたが、許キン/劉詩ブン、2人の高い個人技が折り重なったコンビネーションは、「これぞ中国卓球」というすごみがあった。

し烈な代表争い…東京でのリベンジは?

お互いに東京五輪の出場権をつかみ、2020年の夏に再びペアを組むことはできるだろうか 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 東京五輪混合ダブルスに出場できるのは各国1ペアのみ。日本卓球協会が発表している混合ダブルスの日本代表選考基準では、シングルス・団体戦両方に出場する代表2名に加え、団体戦のみに出場する代表1名の男女各3名の中から最高のペアリングと思われる1組を選出となっている。出場ペアが発表された今年3月時点、世界ランキング日本男子最高位の張本と日本女子最高位の石川のペアリングでエントリーしていたのも、東京五輪を見据えてだったはず。

 決勝後の会見では吉村/石川に対し、海外メディアからは、東京五輪に向けての抱負という気の早い質問も飛んだが「もちろんふたりで出られたら最高ですし、出たいです。でも日本での選考も厳しいですし、まずはお互い出場権を取れて出られたらいい」(石川)と冷静にコメント。激しい代表争いの中では、世界選手権3大会連続決勝進出の実績があっても、たった1枠のペアリングをつかむのは容易ではないことは承知している。

 代表争いがし烈なのは、中国も同様。「(世界選手権の)混合ダブルスで初めて優勝できてうれしい。来年東京五輪があるので、このタイトルはとても重要なものだと思う」(劉詩ブン)と、もちろん今回の優勝の先に五輪も見えている。

「世界選手権で3大会決勝に出られたので、私たちは自信を持って強いペアだと言えると思います」(石川)

 来年の夏、ホーム・東京でリベンジのチャンスをつかめるか。

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