告知不足に不可解な会場変更…解決策は? 新生Vリーグを振り返る<課題編>
新生Vリーグに点数を付けるなら「50点」
新生Vリーグの船出となった今シーズン。「何も変わっていないのではないか」という声も多いが…… 【写真は共同】
中でも男子V1で、全体のプロデューサーとも言うべき手腕を例年発揮し、大会の主役として盛り上げ役に徹するのが豊田合成トレフェルサの高松卓矢だ。今年も来た人に喜んでほしい、と会場を盛り上げたが、試合後の記者会見で高松の歯切れは悪かった。
「今年は僕の準備不足です。ただ、正直に言えば、Vリーグ機構(日本バレーボールリーグ機構)にもっと頑張ってもらいたい、という思いはあります」
開幕直後から高松は常に、公の場で同様の発言をしてきた。チームや選手が盛り上げるのはもちろんだが、リーグとしても、もっと取り組むべきことがあるのではないか。それは高松だけでなく、多くの選手や現場の関係者、そして多くのファンから挙げられる共通の声でもあった。
Vリーグに何か変化はあったのか。その旗振り役であったはずのVリーグ機構は、今シーズンをどう評価しているのか。Vリーグ機構の沖隆夫・事務局長に話を聞いた。
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「あとの足りない50点は、第一にお客様の数が少なかったということです。集客に対してわれわれの広報、告知が足りなかったというのはもちろん大きな反省で、それは来年度以降、早急に取り組まなければならない課題です。
ただ一方で、なぜそれだけ減ったのかと考えると、地域や一般のお客様を呼び込むために、今まで社員を動員していた企業が動員を辞めた。その分が減少したというデータもあります。まだ動き出したばかりで1年目は仕方ない、と捉えることもできますが、それでも、もう少し多くの方に来てほしかった、という反省も含め50点です」
なぜ開幕戦の「地上波放送」はなかったのか?
荒木は「バレーの荒木とは認識してもらっていても『トヨタ車体の荒木』として認識している人は、まだまだ少ない」と話す 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
だが実際は、国際連盟や大会放送局の意向もあり、実現が難しかったと言う。しかし、多くの人が目にするゴールデンタイムで放映される国際大会は絶好のアピールの機会であるのは間違いない。今季はもっと積極的なアピールをしたい、と沖事務局長は言うが、そこで1つ越えなければならない問題が発生する。
BリーグやTリーグのように、Vリーグも開幕戦はテレビで大々的に放映すべきだと考え、さまざまな企業にマッチデースポンサーを依頼し、テレビ局にも放送を打診した。だが返答は芳しくなく、実現に至らない。その理由は明確だ。
「なぜ他の企業を応援しなければならないんですか、と言われました。地域のクラブ、チームを応援するなら分かるけれど、企業を別企業がスポンサーとして支援するというのは、なかなか容易に受け入れられるものではありません。野球もヤクルト、読売とチームに企業名が付いていますが、リーグ自体がプロであり、ホームゲームも多くアピールの機会も多いので、どちらのスポンサーになるか、と言われればプロリーグを選択する。
加えて、東京五輪を控えメディアの方々もJOC(日本オリンピック委員会)の強化指定ランクに合わせ、取材の優先順位を決めるので、卓球やバドミントンに割く人員のほうが必然的に増える。非常に残念ではありますが、バレーボールはコンテンツとしての価値が下がっているというのが現状です」
ファンからすれば不可解な会場変更にも理由が……
グランドファイナルが行われた武蔵野の森総合スポーツプラザを例にすれば、来年の東京五輪ではバドミントン競技の会場となるため、体育館の選択肢はバドミントンが最優先。ファンからすれば不可解な会場変更も、背景にはそんな経緯もあった、と沖事務局長は言う。
とはいえ、そこで何もしなければ事態は何も変わらない。それどころか、より観客は減り、スポンサーも減る。そうなれば企業チームとしての存続や、リーグ自体の運営も危機にさらされる。こうした現状も踏まえ、男子チームからは「もっとホームゲームを増やしてほしい」と前向きな意見が増える一方、女子チームの一部からは「新しくするのではなく、以前のスタイルに戻してほしい」という意見もあるのが現実だ。
タラフレックスコートの設営や、チャレンジシステム、大型ビジョンの設置など予算も切迫した結果、告知や宣伝にかける時間や機会が十分ではなかったこと。女子のレギュラーラウンドを東西で分けた結果、東の3位チームよりもポイント数で上回ったにもかかわらず、西の5位チームはファイナルラウンドへ進出できなかったこと。これらすべてが大きな課題であり、ファンや現場の選手や関係者からすれば「あり得ない」と憤慨するのも無理はない。
この課題をどう克服すべきか。
「ここでこんな試合があります、と情報を開示するという点に関しても、スポンサー獲得に関しても、やってきたつもりでいましたが、劣っていたことを認めざるを得ない状況です。今までは『できない』、『やらない』チームに基準を合わせてきましたが、今はチームの意識も大きく変化した。『やりたい』、『変えたい』という声も多く挙がっているので明確なビジョンを持って、組織として取り組んでいきたいです」