ゴールボール男子、東京パラへ視界良好 国際大会で連続優勝、若手が台頭

吉田直人

成長著しい若手のホープ

成長著しい宮食が不可欠な存在となりつつあるのも日本代表にとって好材料だ 【写真:吉田直人】

 上昇機運のあるチームにおいて共通する要素の一つが“若手の台頭”であろう。

 ゴールボール男子日本代表における成長株が宮食行次(サイバーエージェントウィル)である。182センチの長身を生かした守備範囲の広さと、弾力のあるボールの特徴を生かして、相手の守備を越えていくバウンドボールを身上とする。2017年12月に行われた選手発掘キャンプに参加し、プレーセンスを見いだされた。当初はウイングであったが、昨夏から体格をより生かせるセンター(中央)にコンバートされ、今では代表において不可欠な存在ともなりつつある。「ゴールボールを始めたのが誰よりも遅いので、(20年に向けては)1日も無駄にできません」と意気込む。

 冒頭の米国遠征にも参戦。「タイトな試合スケジュールで体力的にしんどい中で戦えたことは自信になりました。センターとしても得点を稼ぎ出すことができ、(リオパラリンピック銀メダルの)米国代表選手の球を受けられたのは財産になりました」と振り返る。

 目下の課題はディフェンス技術。これまでは相手の投球を受け止める際、前方に弾いてしまうことも多かったという。弾いてしまうと、ボールを回収して味方にパスをする間に相手の守備陣形が整ってしまったり、投球ポイントを察知されたりする難点がある。攻撃の起点ともなるセンターを務める宮食は、この課題を克服するべく鍛錬に努めてきた。

「米国遠征では練習の成果も出て、球を弾くことなく受け止めて、仲間に静かに渡して移動攻撃、というパターンで10点くらい取れました。ディフェンスの向上が結果として攻撃力の向上にもつながったというところでしょうか。いかに体全体を一枚の板のようにするか。まだまだ改善の余地はあるのですが……」

 武器であるバウンドボールにも磨きをかけていくつもりだ。

「いくらバウンドが高くても、“球の伸び”がなければ相手のディフェンスラインに到達する前に失速してしまう。バウンドボールで一番大事なのは、高さよりも推進力だと思っています。なおかつ、ロングボール(※注:ゴールボールの反則投球。投球の2回目のバウンドが規定の線を超えてしまうこと)にならず、空中で音が鳴らないような投球が理想です。さらに追求していきたいですね」

キャプテンから見た課題

戦術の“創造性”ももっと求めていかないいけないと話す信澤キャプテン 【写真:吉田直人】

 池田スタッフの目線から見た男子チームの課題は「プレーの正確性」だという。

「フィジカルの強化で、球の勢いも増しましたが、ショットのコントロールにまだ乱れがある。ディフェンスでも、『ただ止めれば良い』のではなくて、体のどこでどう止めるかを意識しなくちゃいけない。その心掛けがまだ選手たちは少し甘いので、しっかり突き詰めていきたいです」

 加えて、男子代表のキャプテンを務める信澤用秀(フコクしんらい生命保険)はこうも言う。

「プレーの精度は、当然求めていかないといけません。それに加えて、“発想力”や“創造性”も不可欠な要素だと考えています。自分が得点するために、どんな動きを相手に求めるのか。逆に、味方が得点するには自分はどう動くべきなのか。いろいろなことを想像して、チームで検証をして。その反復の先に、新たな戦術が生まれてくると思うんです」

 場数の蓄積、技術の鍛錬に加え、若手の台頭と戦術の研磨。ゴールボール男子日本代表は、虎視眈々(たんたん)とチームの練度を引き上げている。

◆◆◆ NHK番組情報 ◆◆◆
■4月26日(金)11:05〜11:54 「ひるまえ ほっと」
「百獣の王」武井壮さんがパラスポーツを体験、トップアスリートとの真剣勝負に挑みます。今回は2回目となる「ゴールボール」に挑戦! ブリリアンの2人も参戦し、男子日本代表に挑んだ戦いの結果は……。どうぞお楽しみに!

2/2ページ

著者プロフィール

1989年千葉県生まれ。大学時代は学内のスポーツ機関紙記者として、箱根駅伝やインターカレッジを始め各競技を取材。2016年、勤務先の広告代理店を退職後、フリーランスライターとしてスポーツを中心に取材を行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント