DeNA・大貫を勇気づける“番長”の言葉 「可能性は果てしなく広がっている」

日比野恭三

心をいかに強く保つか

幼いころからの憧れ、三浦コーチから指導を受ける大貫(写真左)。期待に応えて、開幕ローテーション入りを果たした 【(C)YDB】

 デビュー戦は4月4日の東京ヤクルト戦。初回から点を失い、3回途中4失点で降板した。

 力を発揮できなかった要因の一つが、極度の緊張だった。三浦が言う。

「試合前、神宮のブルペンで投げているのを見てましたが、『大丈夫かな』という感じでした。プロ初登板ですから。それでも大貫は、試合のマウンドに行けば開き直れるタイプだろうと思ってたんですが、ずっと緊張してたみたいですね」

 確たる自信をまだ持てないままプロに入り、試合で投げ、緊張のあまり腕を振れない。おそらく、今の大貫に何より必要なのは、心をいかに強く保つかだ。

 だから、三浦のアドバイスが身に染みる。大貫は言う。

「もちろん技術的なこともありますが、それ以外に精神的な部分も指導していただいて、困った時には思い出して気持ちを落ち着けています。よく言われるのは『攻めろ』ということ。ぼくは気持ちを前面に出していくタイプではないけれど、攻める気持ちは常に持たなきゃいけない」

 現役時代、“Hit it! If you can.(打てるもんなら打ってみろ)”を信条とした三浦は、大貫のみならず、DeNAの投手陣全体に攻める気持ちを徹底させている。

 三浦の言葉は熱を帯びる。

「試合になってマウンドに行ったら、やっぱり気持ちがすごく大事だと思うんです。自分のフォームばかりを気にしてるようだと、何と戦ってるんだという話になる。対戦相手がいて、その打者と戦わないといけない。気持ちは見えないものなので難しいですが、それは絶対に相手に伝わる。野手に聞くと、ピッチャーが弱気になっているか、気持ちが入っているかどうかは打席で分かると言います。攻めていって打たれることもあるけど、逃げ腰でやられることだけは避けたい。だから、どんどん向かっていって勝負をしてほしい。これは1年間言い続けようと決めています」

プロで1勝、次の目標は……

「次は2勝目を挙げることが目標です」と大貫は語る。果てしなく広がる可能性に向けて、右腕を振り続ける 【(C)YDB】

 大貫が先発した2試合目は、甲子園での阪神戦だった。その2日前の4月9日、最大5点のリードもむなしく終盤に逆転された痛恨の敗戦を、ベンチにいた大貫は目の前で見ている。

「満員で、一球一打にすごい歓声が出る。ちょっと……怖かったですね。ベンチにいながらも、飲まれるような感覚にはなりました」

 翌10日の試合で、濱口遥大が完封勝利を挙げ、気持ちは少し楽になった。初回から行けるところまで全力で行って、ブルペン陣に後を託す。そう気持ちを落ち着かせてから、人生初の甲子園のマウンドに向かった。

 最大のピンチは初回に訪れた。

 2アウト満塁で、打席には中谷将大。マウンドにやってきた三浦にかけられた言葉はもちろん「攻めろ」。一発のある右打者を前に、大貫はまず気持ちで負けなかった。

「自分の持ち味であるツーシームに賭けました。インコースに。攻めきれた結果だと思います」

 セカンドゴロで難を逃れた。2対0の3回、大山悠輔にソロホームランを浴びたものの、5回1失点で役目を終えた。

 リリーフ陣の踏ん張りで、ウィニングボールは大貫の手に無事届けられた。三浦からの「本当におめでとう」の一言が、うれしかった。

 大貫は言う。

「プロで1勝が目標だったので、次の目標は……(笑)。でも、こういう性格ですから、目の前の試合を一つずつ全力で戦っていきたいと思います。だから次は、2勝目を挙げることが目標です」

 自身が大貫の憧れの存在だったことを新聞で知った三浦は、期待を込めて言う。

「彼のこれからの可能性は果てしなく広がっていると思います。打たれる時、負ける時もあると思いますけど、そこを本人がどう乗り越えていくか。ぼくはアドバイスをしたり、フォローをしたりするだけですから。本人次第です。今度は大貫が、いまの子どもたちやファンの方に憧れられる存在になっていってほしいなと思いますね」

 挑み、戦う者の姿に人は憧れる。

“番長”の強い気持ちを継いだ時、大貫の未来はより輝かしいものになるに違いない。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

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著者プロフィール

日比野恭三

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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