豪州GIで日本馬クルーガーが善戦4着 ウィンクスを頂点とした序列見えた1戦

JRA-VAN

2番手マークの3歳牡馬ブルータルが差し切りV!

豪州伝統のGIドンカスターマイルは3歳馬ブルータルが優勝 【Photo by Getty Images】

 トップハンデの古豪ハートネルの58kgから最軽量49kgの3歳牝馬ファンダメンタリストまで上下9kgの開きのあるハンデ戦となったドンカスターマイルはフルゲート20頭によって行われた。この時期のシドニー地区に多い雨が週中にあって当日の馬場状態は10段階で下から4番目のレベル7(JRAの発表は重)。コースの緑は鮮やかで瑞々しく、強い日差しによって回復したかに見えたが、馬場は見た目より遙かに重かったようだ。

 結果は好スタートから先頭を切ったドリームフォース(53.5kg)が逃げ込みを図るところを、2番手でマークした人気の3歳牡馬ブルータル(49.5kg)がゴール前100m地点でかわして優勝。女王ウィンクスが32連勝を飾った前走、G1ジョージライダーステークス(芝1500m、馬場はレベル8で不良)の2、3着馬が、ひとつずつ着順をあげて決着した。

 5番手を進んで直線入り口で見せ場を作ったハートネルはハンデに泣き、軽量の2頭を捉えるに至らず3着で入線。初コンビとなったT.ベリー騎手の手綱で中団を追走したクルーガーは、直線で一瞬速い脚を使って先行馬を追いかけたが、勝ち馬から2.7馬身差、3着ハートネルに0.2馬身差の4着という悪くない内容で海外初挑戦を終えた。

 上位人気に推されていたフィフティースターズは3コーナー手前で3番手に上がるも、前走で見せた決め脚は見られず12着で入線。同じく人気を集めていた牝馬のアリーゼーは17着に終わった。重馬場の勝ち時計は1分37秒65。昨年の優勝馬ハッピークラッパーがレベル4(稍重馬場)でマークした1分33秒17より、約4秒5も遅い時計が、先に行った馬が止まらない特異な馬場であったことを物語った。

異次元の名馬に食らいついた経験が成長の糧に

2番手から力強く抜け出したブルータル(左から2頭目)、日本から参戦したクルーガー(右)も鋭い脚を使ったがあと一歩及ばず 【Photo by Getty Images】

 1、2着馬が出走していたG1ジョージライダーステークスは、女王ウィンクスがほぼ元返しの単勝1.0倍台の断然人気。ドリームフォースは3番人気、キャリア5戦のブルータルは4番人気タイになっていた。

 レースはこの日と同様にD.レーン騎手のドリームフォースが先手を奪って、(前走はT.ベリー騎手で臨んだ)ブルータルが2番手を追走。3コーナーから徐々に上昇したウィンクスが4コーナーで先行馬を射程圏に入れて残り200m地点で悠々と抜け出して優勝。ドリームフォースを残り200m地点で交わしたブルータルが、ウィンクスに3馬身半差の2着となった。さらに2馬身3/4差の3着にドリームフォースという結果を振り返れば女王ウィンクスを絶対王者とする豪州競馬のヒエラルキーが提示されていた可能性も否定できない。

 G1のドンカスターマイルが重賞初制覇となったブルータルはニュージーランドの年度代表馬に輝いたオライリーの産駒。2018年7月のデビュー戦から3連勝を飾った素質馬として認められていたが、重賞初挑戦となった2月16日のG3クリソルドステークス(芝1200m)で3着し、これをステップに臨んだ3月9日のG1カンタベリーステークス(芝1300m)はG13勝馬のトラピーズアーティストの6着に終わった。しかし、G1ジョージライダーSで力の必要な重い馬場を経験したことに加えてウィンクスという異次元の名馬に離されながらも2着に食らいついた経験が、成長の糧になったとも言えそうだ。

 もちろん3歳馬でハンデに恵まれたことや2014年のセイクリッドフォールズ(前走のG1ジョージライダーSで4着)、2015年カーマデック(同3着)、2016年ウィンクス(同1着)、2018年ハッピークラッパー(同2着)など、このG1ドンカスターマイルと相性の良いG1ジョージライダーSをステップに選んだ陣営の戦略も勝利を導く要因となった。

豪州競馬にアジャストした走り

クルーガーはここ2戦のダート経験もプラス、豪州競馬にアジャストした走りを見せた 【Photo by Satoshi Hiramatsu】

 初の異国の地でパドックでは若干落ち着きのなさも垣間見せたクルーガーだが、本番では堂々たる競馬ぶり。ここ2戦のダート経験もプラスに働いた。日本でも重馬場に実績があったが、豪州の競馬にアジャストした走りを披露したのではないか。

(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)
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