初招集組の評価とロシア組の気になる今後 「平成最後の代表戦」に思うこと
復帰したロシア組と初招集メンバーの融合なるか
「初の平成生まれの日本代表」となった香川真司も、今ではすっかりベテランの部類 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
ボリビア戦の前日会見、記者から「明日は平成最後の代表戦になりますが」という質問を受けての、森保一監督の回答である。「平成最後の甲子園」とか「平成最後の大相撲」とか、あるいは「平成最後の王者を決めようじゃないか(FUJI XEROX SUPERCUP2019のキャッチコピー)」とか、このところスポーツ界でも「平成最後の〜」をよく耳にする。だが「平成最後の代表戦」は盲点だった。明確なテーマが見えづらかった今回の2試合にも、奇妙な愛おしさがこみ上げてくるから不思議だ。まさに「平成最後の〜」効果である。
森保監督の言葉どおり、平成の30年間は日本サッカー界にとって、まさに「坂の上の雲」の時代であった。Jリーグ開幕と「ドーハの悲劇」が平成5年、ワールドカップ(W杯)初出場が平成10年、自国開催でのW杯が平成14年、なでしこジャパンのW杯優勝が平成23年、そしてW杯ベスト8まであと一歩だった「ロストフの14秒」が平成30年。余談ながら、カズこと三浦知良のA代表デビューも、実は昭和でなく平成2年の出来事である。
日本代表の面々もまた、気がつけば平成生まれで占められるようになった。今回のメンバーでの昭和生まれは、東口順昭、西大伍、乾貴士の3人のみ。乾と同学年ながら「初の平成生まれの日本代表」となった香川真司も、今では完全にベテラン扱いである。そんなベテランたちとトレーニングを共にした、A代表初招集の安西幸輝は「香川さんや乾さんのクオリティーの高さにはびっくりしました。でも、これが基準というのは誰もが分かっていることなので、負けないようにやっていきたい」と語っている。
森保監督の「先輩や先人の方々がやってくださったことを、未来に向けてさらなる発展につなげていく」という思いは、図らずも今回の代表合宿でも反映されているように感じる。復帰したロシア組と初招集メンバーが、同じ時間を共有することで、どのような日本代表の未来につながっていくのか──。そこに、3月シリーズの意義を見いだしたいところだ。
結果も内容も中途半端に終わったコロンビア戦
コロンビア戦は結果を求めるにしても新戦力をテストするにしても、中途半端なものに終わった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
開始早々、セバスティアン・ビジャがクロスバーをたたくシーンはあったものの、前半のほとんどの時間帯は日本のペース。45分間で3本のシュートを放った堂安をはじめ、南野と中島も積極的にゴールを狙い、右サイドからの室屋の攻撃参加も効果的であった。しかし、先制点はなかなか生まれない。もっとも日本のシュートは、その多くがミドルレンジから放たれたもの。前半37分には、中島の正確なクロスに鈴木がダイビングヘッドで狙ったが、わずかに枠外となってしまった。
後半は、それまで控えめだったコロンビアの圧力が強まり、次第に日本を圧倒する。ケイロス監督は「日本はアジリティーとスピードと技術が高く、縦パスを多用した攻撃に特徴があった」とした上で「前半は彼らに仕事をさせないようにして、後半は日本が疲れたところで攻勢に出た」と語っている。そして後半19分、ペナルティーエリア内での冨安のハンドで得たPKを、ラダメル・ファルカオが冷静に決めてコロンビアが先制。結局、これが両チーム唯一のゴールとなり、日本は森保体制となって初めて無得点で敗れることとなった。
この試合での森保監督の狙いは、アジアカップのメンバーを中心に据えながら、融合可能な新戦力を見極めることであった。とりわけ大迫勇也に代わるワントップ候補探しは、6月のコパ・アメリカまでに結論を出しておきたかったはず。もし鈴木が前半に結果を出していたら、彼に代わって鎌田大地が後半頭から起用されていたかもしれない。しかし相手に先制されたことで、直後に鈴木に代わって投入されたのは、経験豊かな香川。鎌田が代表デビューを果たしたのは、残り11分という時間帯であった。
結果としてコロンビア戦は、結果を求めるにしても新戦力をテストするにしても、いささか中途半端なものに終わった(収穫としては、昌子と冨安のコンビが機能することを確認できたことか)。むしろ前半の決定機を生かせなかったこと、後半にインテンシティーを持続できずに押し込まれたことなど、明確な課題が残された。次に対戦するボリビアは若手中心であるため、日本がボールを握る時間が増えるのは確実。その中で、どれだけ課題を修正できるかが注目ポイントとなった。