山本由伸が見せる一流アスリートの共通点 侍デビュー戦で“百戦錬磨”の投球を披露

中島大輔

高卒3年目、進化はこれからも続く

今年から先発に転向する山本。さらなるスケールアップに期待がかかる 【写真は共同】

 20歳にして高い完成度を誇る山本は、全盛期に無敵の力を発揮した浅尾拓也(元中日)と比べられるほどの投球内容を見せているが、投手を本格的に始めたのは高校1年秋で、中学時代の本職はセカンドだったという。つまり、伸びしろがまだまだ多く残されていると言える。

 日本でトミー・ジョン手術の権威として知られる慶友整形外科病院の古島弘三医師によると、肘の靭帯を痛めるのは小中学校時代に投げすぎなどで1度故障し、後に“再発”するケースが多いという。逆に、高校や大学になって新たに痛めるケースは珍しい。つまり健康な体で大人になるほど、投手は大きく飛躍できる可能性が高まるのだ。

 最速154キロを誇る山本は、まだまだ成長過程にある。178センチ、80キロと現段階では投手としては痩せ気味。だが、これから時間をかけながら肉体的な力強さを身につけ、スタミナを増やしていけば、格段にスケールアップできるだろう。山本自身も、じっくり先を見据えている。

「まだ体が出来上がっているわけではないので、トレーニングやケアを丁寧に行って、基本からしっかりやっていこうと思っています。今は完成しているわけではないですし、まだまだ体も大きくなっていきます。何て言うんですか、大人の体に完成してくると思うので。その中で技術も練習してレベルアップしていければと思います」

 今季から先発に再転向する予定で、週に1度の登板ペースはスケールアップも図りやすいだろう。自ら先発での起用を直訴する姿勢やビジョンも、高い期待を抱かせる。

 果たして、誰もが認める潜在能力を誇る剛腕投手は、今後どこまで突き抜けていくのか。長い時間軸の中で追いかけたくなるような侍ジャパンのデビュー戦であり、まもなく迎えるペナントレースでの楽しみが1つ増えた試合だった。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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