山本由伸が見せる一流アスリートの共通点 侍デビュー戦で“百戦錬磨”の投球を披露

中島大輔

打者を打ち取るパターンが豊富

日本代表デビュー戦でも、持ち味を存分に発揮した 【写真は共同】

 高卒3年目の弱冠20歳。昨季パ・リーグ本塁打王の山川穂高(埼玉西武)が「見たことないカットボール」と言えば、メジャーリーグに移籍する前の大谷翔平(エンゼルス)も「今年(2017年)やった中で一番良かった」と絶賛。それがオリックスの最速154キロ右腕・山本由伸だ。

 並み居る打者がたたえる才能は、初めて日の丸のユニフォームに身を包んだ3月9、10日の「ENEOS侍ジャパンシリーズ2019」でも垣間見えた。

 メキシコとの強化試合2戦目、普段から慣れた京セラドームのマウンドに上がった山本は、とりわけピンチで百戦錬磨のベテランのように落ち着いた姿を見せた。

「野球を楽しめたと思います。とにかくいつも通りというか、ストライク先行で、冷静にと思って投げました」

 3回から2イニングを投げて被安打2、無失点。最速151キロのフォーシームやカットボールで押す一方、4回に招いた1死1、3塁のピンチでは低めのフォークで連続三振に斬って取った。この日はコントロールミスも目についたが、基本的には力勝負で相手打者を押し込みつつ、宝刀のカットボールやフォークで空振りを奪うこともできる。打者を打ち取るパターンが多く、ピンチにも動じない姿は高卒2年目にして試合終盤を任されるだけの能力を感じさせた。

結果が出たときほど、反省点を探す

ピンチを連続三振でしのいた山本(写真右)は、笑顔で捕手の田村とタッチを交わした 【写真は共同】

「アウトも普通に取れたのは良かったところで、ボールが多くなってしまったのが課題です」

 今回のチームでは投手陣最年少の20歳、しかも日本代表のデビュー戦だ。加えて剛腕のイメージが強いだけに、取材者としては威勢のいいコメントを聞きたくなる。

 しかし、試合後の山本はいたって淡々としていた。それどころか、侍ジャパン初登板を無失点で飾った喜びより、反省の弁が多かった。

「いつも投げ終わると、自分の良かったことより反省のほうが多くなってしまいます。ボール球が多くなるのはよくないと思うので、今日は反省点が多いかなと思います」

 結果が出たときほど反省点を口にするのは、一流アスリートに共通する姿勢だ。例えば筆者が2005年からスコットランドで4年間取材していた、サッカー元日本代表の中村俊輔はその一人だった。好パフォーマンスを発揮したときは課題を口にし、内容が悪かった場合は収穫に目を向ける。そうして次の試合に向けてメンタルをコントロールし、現状に少しも満足せずレベルアップを図っていた。

 同様に向上心を高く持つ山本は、侍ジャパンにとって今年の秋に開催されるプレミア12、そして来年の東京五輪に向けて、独自の武器を持っている点で心強い。フォークという落ちる球に加え、フォーシーム、カットボール、そして左バッターの外角に高速で逃げていくツーシームという“強いボール”も国際舞台で威力を発揮するはずだ。建山義紀ピッチングコーチはその点を評価した。

「バッターが嫌がるのは一番速いボール、強いボールです。そういう意味では、今日の山本は本当に強いボールを投げてくれていたので、今後しっかり見ていきたいなという投手の一人です」

1/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント