山本由伸が見せる一流アスリートの共通点 侍デビュー戦で“百戦錬磨”の投球を披露
打者を打ち取るパターンが豊富
日本代表デビュー戦でも、持ち味を存分に発揮した 【写真は共同】
並み居る打者がたたえる才能は、初めて日の丸のユニフォームに身を包んだ3月9、10日の「ENEOS侍ジャパンシリーズ2019」でも垣間見えた。
メキシコとの強化試合2戦目、普段から慣れた京セラドームのマウンドに上がった山本は、とりわけピンチで百戦錬磨のベテランのように落ち着いた姿を見せた。
「野球を楽しめたと思います。とにかくいつも通りというか、ストライク先行で、冷静にと思って投げました」
3回から2イニングを投げて被安打2、無失点。最速151キロのフォーシームやカットボールで押す一方、4回に招いた1死1、3塁のピンチでは低めのフォークで連続三振に斬って取った。この日はコントロールミスも目についたが、基本的には力勝負で相手打者を押し込みつつ、宝刀のカットボールやフォークで空振りを奪うこともできる。打者を打ち取るパターンが多く、ピンチにも動じない姿は高卒2年目にして試合終盤を任されるだけの能力を感じさせた。
結果が出たときほど、反省点を探す
ピンチを連続三振でしのいた山本(写真右)は、笑顔で捕手の田村とタッチを交わした 【写真は共同】
今回のチームでは投手陣最年少の20歳、しかも日本代表のデビュー戦だ。加えて剛腕のイメージが強いだけに、取材者としては威勢のいいコメントを聞きたくなる。
しかし、試合後の山本はいたって淡々としていた。それどころか、侍ジャパン初登板を無失点で飾った喜びより、反省の弁が多かった。
「いつも投げ終わると、自分の良かったことより反省のほうが多くなってしまいます。ボール球が多くなるのはよくないと思うので、今日は反省点が多いかなと思います」
結果が出たときほど反省点を口にするのは、一流アスリートに共通する姿勢だ。例えば筆者が2005年からスコットランドで4年間取材していた、サッカー元日本代表の中村俊輔はその一人だった。好パフォーマンスを発揮したときは課題を口にし、内容が悪かった場合は収穫に目を向ける。そうして次の試合に向けてメンタルをコントロールし、現状に少しも満足せずレベルアップを図っていた。
同様に向上心を高く持つ山本は、侍ジャパンにとって今年の秋に開催されるプレミア12、そして来年の東京五輪に向けて、独自の武器を持っている点で心強い。フォークという落ちる球に加え、フォーシーム、カットボール、そして左バッターの外角に高速で逃げていくツーシームという“強いボール”も国際舞台で威力を発揮するはずだ。建山義紀ピッチングコーチはその点を評価した。
「バッターが嫌がるのは一番速いボール、強いボールです。そういう意味では、今日の山本は本当に強いボールを投げてくれていたので、今後しっかり見ていきたいなという投手の一人です」