吉田、上林は侍打線の中核に成長できるか 最後の“試す機会”で猛アピールに成功

中島大輔

状態が悪くても、良さを見せた上林

第1戦で3安打の活躍を見せた上林も、実力をアピールした 【写真は共同】

 それに対して、シーズンオフの自主トレで「柳田、秋山の時代を終わらせる」と発言して話題になった上林は、打撃の状態が悪いなか、決して口だけではないところを示した。2戦目はタイミングが合わない打席が続いて4打数無安打に終わったものの、前日の初戦では1番に入って5打数3安打。17年秋のアジアプロ野球チャンピオンシップから5度連続で侍ジャパンに選ばれている経験を生かした格好だ。

「よく(ボールが)『動く、動く』と言われるんですけど、確かに動きますが、バッティングはタイミングが一番大事。そこさえ合わせていければ、どの投手でも打っていけるのかなと思います」

 2対4で迎えた初戦の9回、1死1、2塁から長打狙いで打席に入るも、強引に低めのボール球に手を出すなど本調子とは程遠い。しかし、そんな中でも切り込み隊長の役割を果たしたように、バットコントロールのうまさが光った。シーズンに入って状態が上がってくれば、十分にリードオフマンの役割を任せられるだけの力を持っている。

「今後も1番を打ちたいか」と聞かれた上林は、自主トレの頃とは違って控えめに答えた。

「レギュラー陣が入ってきた中でどうかなというところがありますし、あまりこだわりはないですね。(代表に)選ばれて、シーズンで結果が出て自信がもうちょっとついてきたら打ちたいなと思うかもしれませんが、今はまだかなわないですし、結果でも勝っていない。まずはそこで勝っていかないと、1番とかそういう先は見えてこないと思います」

「チームから信頼される選手に」

 侍ジャパンにとって、あくまで今回のメキシコ戦は試すための場所だ。果たして秋を迎えた時、吉田は筒香のように誰もが認める4番になり、上林には秋山のようにチームに勢いをつける1番の役割を任せられるか。その答えが出るのは、まもなく始まる19年のペナントレースだ。そこで結果を残した者だけが、シーズン終了後に日の丸を背負って戦うことになる。

 今後の飛躍を期待されて選ばれた27選手に対し、稲葉監督はシーズン開幕に向けてこうエールを送った。

「チームから信頼される選手になってもらいたいです。ミーティングでも言いましたが、もっともっと野球を勉強してもらって、自分たちがこのチームを引っ張っていくという強い気持ちでやっていってもらいたいです」

 17年秋のアジアプロ野球チャンピオンシップに出場した山川穂高や外崎修汰(ともに埼玉西武)、上林、近藤健介(北海道日本ハム)らがそれぞれのチームで主力に駆け上がったように、今回メキシコ戦に選ばれた27選手から一人でも多くステップアップを果たす者が出た時、2019年開幕前に侍ジャパンですごした時間はより大きな価値を持つことになる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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