清原和博への告白

高校野球史上最長140メートル弾の裏で
清原和博に敗れた男たちの告白

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清原が5回に放った特大のホームランは推定飛距離140メートル。またひとつ伝説を作った
清原が5回に放った特大のホームランは推定飛距離140メートル。またひとつ伝説を作った【写真は共同】

 高知商の主戦捕手・岡村英人は、エース中山裕章を「桑田真澄以上の才能」と信じ、猛練習に付き合い、甲子園の土を共に踏んだ。

 中山の投げるストレートは、どんなバッターにも通用する。そう信じ、共に戦い、そして清原和博との対戦にたどり着いた。

 渾身のストレートを左中間スタンド上段に運ばれた後、中山がマウンドで見せた表情を、岡村が忘れることはないだろう――。

「正直、中山は桑田より上だったと思います」

 一方で、チームはなかなか全国の舞台に立てなかった。谷脇は焦っていた。

「こいつがいれば、甲子園で優勝できる」

 そう確信するほどの逸材・中山を抱えながら、甲子園の土を踏めない。

 当時、高知には全国トップレベルの強豪校が揃っていた。中山たちが最上級生となった2年秋の県大会、準々決勝で伊野商に敗れて、選抜出場を逃した。メガネの怪腕・渡辺の前に完封負けだった。

 その伊野商は四国大会決勝で明徳義塾に敗れたものの、選抜では全国の頂点まで駆け上がっていった。渡辺は準決勝で清原を完全に抑えて、PLを3−1で下したのだ。

 甲子園に出ることさえできれば、頂点を狙えるという確信がありながら、高知を勝ち抜けない。残されたチャンスは、あと1度だけだった。

 谷脇は伊野商に敗れた後、中山を呼んだ。

「もう、チャンスないんやぞ! お前は甲子園に行かなあかん!」

 その後、岡村を呼んで、こう言った。

「甲子園に行きたかったら、中山を連れて走ってこい。明日から毎日、高知城に『おはようございます』って挨拶してこい!」

 翌日から岡村と中山は、朝6時に高知城・二の丸前で待ち合わせた。200段近くある階段を5往復し、それが終わると、学校まで走っていく。それを日課にしようと決めた。 だが、2週間もすると、中山が姿を見せなくなった。

「中山が来ません……」

 報告にきた岡村を、谷脇は怒鳴った。

「引っ張ってでも、やらせえ!」

鈴木忠平

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