清原和博への告白
友に告げた、ある決意「ぶつけたるわ」
清原和博に敗れた男たちの告白

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清原は享栄戦で3本のアーチ。1試合最多本塁打の新記録を打ち立てた
清原は享栄戦で3本のアーチ。1試合最多本塁打の新記録を打ち立てた【写真は共同】

 1984年夏の大会1回戦、PL学園vs.享栄戦。この試合で清原和博は、3本のホームランを打ち、1試合3本塁打の新記録を作っている。

 先発・村田忍は、清原の一発を含めて7点を取られ、4回で降板。2番手・稲葉太に「頼むな」と声をかけた。

 稲葉はそのエースの言葉を胸に、清原と3打席、対峙した。2つのホームランと、もう1つの打席。そこで起きた出来事には、どんな思いが込められていたのか。

不名誉な新記録「まったく悔しくない」

 その村田が甲子園のマウンドに立ち尽くしていた。清原が悠然とベースをまわる。満員の観衆がPLの4番に送る大歓声がこだました。稲葉と牧野は室内のブルペンでそれを聞いていた。初回、村田の状態を見た監督が、すぐ稲葉に準備するよう命じたのだ。室内にあるブルペンには、その後も金属音と歓声が交互に聞こえてきた。2人は無言のうちに悟った。村田が滅多打ちにされている。独り、すべてを背負ってきた、あの村田が……。

 稲葉が肩をつくり終わってベンチに戻ると、そこには呆然としている村田がいた。初めて見るライバルの姿だった。

「頼むな」

 村田からそんな言葉をかけられたのは初めてだった。それを胸に甲子園のマウンドに向かった。

 稲葉は腹の底をたぎらせていた。それでも、PL打線は容赦なく、自慢の速球を打ち返してきた。5回に2点を奪われて、0−9とリードを広げられた。

 そして、6回、清原と初めて対した。

「ストレートで勝負するつもりでした。その前に変化球を見せ球にしようと思ったら、それが中に入ってしまった」

 カウントを取りにいったカーブだった。

「まずい」

 そう思った瞬間、稲葉は不思議な感覚に陥った。景色がスローモーションになり、バットがボールを乗せて運んでいく様が、はっきりと見えたのだ。

「僕の錯覚なのかもわからないですが、打った瞬間、バットの上にボールが乗っている感じがしたんです。すごく、ゆっくりというか。そういう感覚になったのは初めてでしたね」

 稲葉はスタンドまで飛んでいく白球を見上げながら、あの村田を打ちのめした清原という打者の圧力を肌で感じた。

鈴木忠平

スポナビDo

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