清原和博への告白

『怪物に挑んだ絆』2人を繋ぐ夏の記憶
清原和博に敗れた男たちの告白

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9回表、清原にこの日3本目の本塁打を打たれ、享栄・稲葉(中央)はぼう然と打球を見送る
9回表、清原にこの日3本目の本塁打を打たれ、享栄・稲葉(中央)はぼう然と打球を見送る【写真は共同】

1984年夏 1回戦

PL学園 14−1 享栄


 1984年夏。夏連覇を目指したPL学園の1回戦の相手は、強豪・享栄高校だった。先発マウンドに立ったのは、キャプテンでエースの村田忍。彼をリリーフしたのが、3年春まではエースだった稲葉太。

 性格も、野球に向き合う姿勢も正反対。仲が悪かったわけではないが、一定の距離を置きながら歩んできた2人のライバルは、それぞれの思いを胸に、甲子園という大舞台で、清原和博と対峙した――。

清原2度目の夏、初戦。

 金属音が響いた。その瞬間、村田忍には確信があった。

「ライトフライだ」

 3回、外角を狙ったストレートはやや高くなったが、球威は申し分なかった。バットを遅れさせた感触があった。だが、白球は落ちてこない。右翼手が下がる。まだ、落ちてこない。1度は捕球体勢をとりかけたが、再び背走を始めた。そして、諦めた。

「打ち取ったと思いました。しかも、甲子園のライトは逆風ですから。それが入っちゃうんですからね……。自分の想像を超える奴っていうのはいるんだな、と思いましたね」

 歓声とざわめきの中、PL学園の4番がゆったりとベースをまわっていた。


 1年生で全国の頂点に立った清原和博が臨んだ2度目の夏、初戦でぶつかったのが野球王国・愛知の強豪・享栄だった。初回、3年生のエース村田は2死二塁で、清原を迎えた。フルカウントから外のスライダーをうまく合わせられ、ライト前に先制タイムリーを打たれた。ホームラン打者としては、拍子抜けする軽打だった。

「ランナーがいたので外角のボールに軽くバットを合わせたという感じでした。彼のスイングはホームランを狙っているようには見えなかった。だから、外に投げれば、1発はないかなと思っていました」

鈴木忠平

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