清原和博への告白

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清原和博に敗れた男たちの告白

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PL学園は決勝で横浜商を破り、5年ぶり2度目の優勝を飾った
PL学園は決勝で横浜商を破り、5年ぶり2度目の優勝を飾った【写真は共同】

1983年夏 決勝

横浜商 0−3 PL学園


 1983年の夏。主役は、前年夏、そしてその年の春の大会を制した「やまびこ打線」、水野雄仁擁する池田高校のはずだった。

 そして全国の高校球児たちは、誰もが「打倒・池田高校」を掲げ、苦しい練習に耐え、厳しい地方大会を勝ち上がり、王者への挑戦を誓っていた。

 この男もまた、池田高校へのリベンジに燃えていた。春の大会・決勝戦で散った、横浜商のエース・三浦将明――。

“やまびこ打線”池田、敗れる。

 その日、神奈川の強豪・横浜商、通称“Y校”の選手たちは、甲子園球場から数キロ離れた場所にいた。約2時間後に控えた準決勝に向けて、ウォーミングアップをするためだ。野球部の専用バスがグラウンドに横付けにされていた。開けっ放しになったドアから、ラジオの音が聴こえてくる。エースの三浦将明は体をほぐしながらも、全神経を耳に集中させていた。

「7−0とPL学園がリードです」

 アナウンサーの声に、全員が一斉に顔を見合わせる。自分たちより先に行われている準決勝第1試合、池田対PL学園の途中経過だった。

「おい、何か間違ってるぞ」

 三浦が言った。他の選手たちもうなずいた。そうしているうちに、再び、経過が伝えられた。やはり、PLがリードしていた。

「絶対おかしいぞ」

 いてもたってもいられなくなった三浦はバスに戻り、運転席のスピーカーに耳を近づけた。他の選手たちも次々にやってきて、折り重なる。何度、聞いても、経過は同じだった。

 三浦が思わず、呟いた。

「嘘だろ……」

鈴木忠平

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