堂安律は“屈辱感”を胸にリベンジを誓う 長友も期待を寄せる、ずば抜けた向上心
決勝T以降は警戒され、思うような動きができず
決勝T以降は徐々にプレーを研究され、思うような動きができないことも増えた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
堂安はPK奪取につながる起点のパス出しを見せたものの、日本通の敵将、ピム・ファーベーク監督に分析され、警戒される部分も少なくなかった。「もう少しアイデアが必要だなと感じた」と本人も述懐するように、相手のマークが厳しくなる中、いかにして解決策を見いだすかという新たな課題も突きつけられた。その難易度は決勝トーナメント以降、試合ごとに上がっていった印象だ。
顕著だったのが、日本のボール支配率が23.7%と攻め込まれた21日のラウンド16・サウジアラビア戦。開始7分に原口のクロスを南野がそらしたボールに反応するシュートシーンをいきなり作ったものの、その後はボールキープできない状況が続いた。レフティーの若武者が左足でファーストタッチをするという癖を相手も分析していて、一歩目の出足を狙われるシーンも目についた。それは28日の準決勝・イラン戦やカタール戦でも何度か見受けられた。
思うようにドリブルを仕掛けられず、前へ出られなくなった堂安は守備に忙殺される。時折、繰り出すカウンターも不発に終わり、いら立ちを募らせた。堂安がドリブル突破という絶対的武器を備えていることは特筆すべき点であり、これからも研ぎ澄ませていくべき部分だ。ただ、日本対策を講じてくるアジアでは、常にその強みを発揮できるわけではない。
ドリブルで確実にタメを作れる中島がいたらよりフリーになって前へ行けたかもしれないが、原口とのコンビでは微妙にリズムが違っていた。南野も徹底マークで苦しむ中、堂安には攻撃陣をどう機能させていくのかという命題が課された。中島不在が影を落としたのは事実かもしれないが、代表攻撃陣の軸を担う堂安には、自らイニシアチブを取って、多彩なバリエーションを示す必要があった。苦しんだサウジ戦などはその重要性を再認識するいい機会になったのではないか。
長友も太鼓判を押す、堂安のメンタルの強さ
「律の向上心は本当にすごいし、ずば抜けている」と長友(5番)も太鼓判を押す 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
準決勝のイランでもその流れを持続させた。前半こそ屈強なフィジカルと当たりを備えた相手に凌駕(りょうが)されたものの、後半に入ってからは運動量と集中力で上回り、大迫の2ゴールと原口のダメ押し点で3−0と圧勝した。ただ、堂安には南野とのワンツーで右サイドを駆け上がり、敵をかわして打った左足シュートを防がれた決定機に象徴される通り、フィニッシュの課題が残された。
「自分は一発を持っていると思っていたけれど、なかなか振り切れず、大会を通してその一発を出せなかった」と決勝後に述懐した通り、A代表デビューしたばかりのアタッカーが大舞台でゴールを奪う難しさを再認識したのは間違いない。「どこで一発を出すのか、自分の特徴をどうやって出すのか。それを逆算してプレーしていきたい」と堂安も自戒を込めて口にしていた。
今大会の日本は、4試合出場の大迫が4得点で、全7試合出場の原口が2得点、6試合出場の堂安と南野がそれぞれ2点と1点。9ゴールを挙げ、得点王とMVPをダブル受賞したカタールのアルモエズ・アリのような傑出した点取り屋は不在だった。総得点も優勝したカタールの19に対して日本は12。これも含めて数字的にも物足りなく映った。
堂安自身もアルモエズ・アリという2つ年上の新星には刺激を受けたことだろう。もともとワールドカップ・ロシア大会に参戦したキリアン・ムバッペ(フランス)やイ・スンウ(韓国)を見て「自分は何をやってるんや」と焦りを覚えていた男だ。さらなるレベルアップへの渇望を強めたに違いない。
「律の向上心は本当にすごいし、ずば抜けている。あの信念の強さがあれば上にいけますよ」と長友も太鼓判を押すメンタルの強さがあれば、優勝を逃した屈辱感をバネにできるはず。堂安のここからの巻き返しに大きな期待を寄せたい。