大坂なおみ、優勝の鍵は左利きサーブ攻略 全豪OP決勝を浅越しのぶ氏が展望

構成:スポーツナビ
 テニス女子で世界ランキング4位の大坂なおみ(日清食品)は24日、四大大会の開幕戦「全豪オープン」女子シングルス準決勝でカロリナ・プリスコバ(チェコ)をフルセットの末に下し、自身初の決勝進出を果たした。

 26日の決勝では、今大会で1セットも落とさず勝ち上がった世界ランキング6位のペトラ・クビトバ(チェコ)と対戦する。かつて世界2位まで上り詰めた28歳のベテランに勝つために、大坂に必要なこととは? 2004年全米オープン女子シングルスでベスト8に進出した元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶ氏に聞いた。

全豪で光るメンタル面の成長

全豪オープンで決勝に進出した大坂なおみ。昨夏の全米に続くグランドスラム2連覇への鍵は!? 【写真:ロイター/アフロ】

――今大会の大坂選手のこれまでの試合をどう分析されていますか?

 昨夏全米オープンを優勝してからは、今大会が初めてのグランドスラムです。グランドスラムを2大会連続で優勝することはめったにないことで、特に全米→全豪の連覇はオープン化された1968年以降だと女子では15回しかありません。チャンピオンになったプレッシャーはあったと思いますし、(全米優勝で)メディア対応やイベント出演など、今までの生活スタイルとはまったく変わってしまったと思います。自分の体調管理や練習の時間があまりない中で、何より本人が勝ちたいという気持ちを強く持ち続けていますし、周囲もチーム一丸となってしっかりサポートができていると思います。

 プレーに関しては、昨年から取り組んでいるフットワークがすごくいいと思います。左右に振られてランニングショットのような形になっても、体幹がぶれることなく、ボールとラケットがしっかりと当たっています。特に、ランニングショットをしてからクロスにボールを持っていく「クロスラリー」はすごく難しい。もちろん上手な選手もいますが、大坂選手ほどの脚力があるとさらにすごい角度に持っていくことができます。それが昨年の全米の少し前あたりから一番変わったところだと思います。それまでは力に頼って、フェンスまで飛んでいくようなアウトがすごく多かった。それが、しっかりとフットワークを取って、ボールもコントロールできて、なおかつすごい角度に打つというのは、フットワークと体幹がぶれずにしっかりバランスがいい形でトレーニングできているからではないでしょうか。

――プレー以外の面ではいかがですか?

 試合の組み立てもすごくうまくなったなと思います。以前はクロス、クロス、クロスみたいな感じでムキになってクロスラリーを打つような感じでしたが、今は相手を見て、時にはクロスラリーを続ける時もあるし、時には1球ずつ相手を振り回すこともある。そういった試合の組み立ても以前より上手になったと思いますね。

――プレッシャーの中でも、成長したプレーを発揮できているのは、やはりメンタル面での成長も大きいのでしょうか?

 そうですね。例えば、3回戦で戦ったシェ・シュウェイ選手(台湾)はすごくトリッキーな選手で、ゆっくりなボールを打ったり、ドロップショットを打ったりと、なかなか打ち合ってくれないんです。今大会では彼女と当たった時が一番危なかった。大坂選手は速いボールにはうまく対応できるのですが、コートの前のほうにボールを落とされたり、ちょっとゆったりしたボールを使われたりすると、相手に合わせてしまうところがあって。それまでしっかり打っていたのが、ゆっくりなボールをつなげてみたり、相手に合わせてしまったりして、何をしていいのか分からなくなってしまうといった様子が見られました。

 1セット目を奪われて、2セットも1−4となった時に「このまま負けちゃうな……」と思いましたが、そこからの気持ちやプレーの立て直しが今までのメンタルとは違いました。今までだったら自滅してそのままズルズルいってしまいましたが、今大会ではそこから自分がやらなければいけないプレーをもう1回出すことができました。全豪オープンという大きな舞台で「勝ちたい」という気持ちはあっても、1回崩れてしまうとその気持ちはなかなか戻ってきにくいものです。そこを立て直せたのは、全米でチャンピオンになったという実績もありますし、誰にも負けたくないという気持ちもあったでしょうし、今までの経験から成長した部分なのかもしれません。そういったメンタルの部分は、今までで一番成長を感じましたね。

クビトバ攻略のポイントは?

クビトバは左利き。外に出て行くようなボールに対して大坂はどう対応するか 【写真:ロイター/アフロ】

――決勝で対戦するクビトバ選手のプレーの特徴は?

 彼女は超攻撃型で、183センチと長身の選手です。かつて世界ランキングを2位まで上げ、ウィンブルドンでは2011年と14年の2度タイトルを獲得するなど、実績もあります。私自身、大会前に「大坂選手以外だとクビトバ選手が来るのではないか」と思っていたくらい、今年は試合の入り方がすごく良くて、優勝したシドニー国際(1月6〜12日)のプレーを見ても、全盛期のような動きでした。サービスもいいし、サービスを入れた後の次のボールもすごくいいので、そこで相手を押してポイントにつなげています。ここが、彼女が他のどの選手よりも優れている部分ですね。

 また、彼女は左利きです。例えば、左利きのサーバーがアドバンテージサイド(左側)からサーブを打つ場合、リターンする側から見るとコートの外に出て行くようなボールが入ってきて、レシーバーはコートから追い出される形になります。そうなると空いたところを決められるし、一生懸命戻ろうとすると今度は逆を突かれて決められてしまう。こうした左利き独特のサーブからの展開が、クビトバの優れているところです。これを攻略しないことにはブレークにつながりません。

――クビトバ選手のサーブを攻略するためのポイントは?

 攻略するにはリターンでコートの中に入ってボールが外に切れないうちに打ってしまうか、ちょっと下がって少し滞空時間のあるボールを打つか、もしくは思い切りひっぱたいて相手のバランスを崩すか、その3パターンくらいしかありません。もちろん大坂選手のサービスはすごくいいので、そこはしっかり集中して取りにいくことを考えないといけませんが、クビトバ選手のサービスに対してどのように入っていくかは重要なポイントになると思います。

 ただ、クビトバ選手はロングラリーが苦手で、長くラリーをされるとあまり我慢ができない選手です。すぐに決めにいきたい気持ちからか、ボールが少し浮いてしまう時があって、2、3球で決めなければストロークにミスが出てきます。クビトバ選手は超攻撃型のストロークですので、大坂選手はしっかりとしたフットワークでついていって、できるだけ長いラリーにすることが大事だと思います。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント