2大会ぶりの4強は評価すべき一方…
序列が固定化する日本はイランに勝てるか

日本と相対するグエン・コン・フォンについて

アジアカップ準々決勝はベトナムとの一戦となった
アジアカップ準々決勝はベトナムとの一戦となった【Getty Images】

 アジアカップ20日目。大会は3分の2が終了し、いよいよ準々決勝が始まる。ここまで勝ち上がった8強は、日本、ベトナム、中国、イラン、オーストラリア、UAE、韓国、そしてカタール。この日は17時(現地時間、以下同)からドバイで日本対ベトナム、そして20時からアブダビで中国対イランが行われる。ラウンド16から中3日のベトナムに対して、日本は中2日。日程的には不利な状況だが、この試合に勝利すれば準決勝まで中3日となり、次の対戦相手(中国対イランの勝者)とはイーブンの状態で戦える。とはいえ、まずはベトナムにしっかり勝つこと。ベスト8唯一の3位抜けとはいえ、決して侮ってはいけない。


 そのベトナムの前日会見。同時刻に日本の前日練習が別会場となったため、取材する日本のメディアの数は限られ、ベトナムと韓国の記者が目立っていた。韓国人記者の目当ては、チームを率いるパク・ハンソ監督。今大会唯一の韓国人指揮官ということもあり(韓国代表の監督はポルトガル人のパウロ・ベント)、ベトナムをベスト8に引き上げたパク監督は今や韓国メディアの注目の的となっている。もっとも私自身はパク監督よりも、隣に座っていたベトナムの10番、グエン・コン・フォンに注目していた。


「日本では1年間プレーしていたので、彼らの特徴は理解しています。プレッシングはハードでパス回しではベトナムは勝てないでしょう。それでもベストを尽くしたい」


 そう語るグエン・コン・フォンは、2016年にホアン・アイン・ザライFCから水戸ホーリーホックに1年間の期限付き移籍をしている。受け入れ側の水戸としては戦力面での補強とは別に、Jリーグが推し進めていたアジア戦略に沿う形で、ベトナムからのインバウンド効果の期待もあった(実際、水戸のホームゲームが組み込まれたベトナム向けのツアーが企画されている)。


 グエン・コン・フォンの日本での挑戦は、およそ成功したとは言い難い結果に終わった。出場はわずか5試合でゴールはゼロ。合流直前の代表戦で鎖骨を骨折してしまい、治療とリハビリに時間がかかってしまったことが、不振の一番の要因であった。かくして日本ではインパクトを残すことなく、祖国に帰還したグエン・コン・フォンであったが、それでも「ベトナムのメッシ」の異名はだてではない。今大会では守備的なチームにあって、4試合で2ゴールを挙げてベスト8進出に貢献。準々決勝で実現した日本との対戦は、当然グエン・コン・フォンにとって期するものがあったはずだ。

ベトナム戦でもメンバーを固定した森保監督

警告をもらうと次戦は出場停止になる選手を多く抱える中、森保監督はスタメンを固定してきた
警告をもらうと次戦は出場停止になる選手を多く抱える中、森保監督はスタメンを固定してきた【Getty Images】

 さて、この準々決勝で注目すべきが、ビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)の導入である。日本はグループステージのオマーン戦で、誤審を味方につける形で1−0で勝利しているが、今後あのようなシーンがあれば即VAR判定となる。この件について会見で質問された森保一監督は、「VARがあってもなくても、われわれがやることに変わりはない」と語り、フェアプレー精神を貫いていくことを強調。それはそれで大切なことではあるが、VAR未経験の選手が多くを占める点については、若干の不安が残るところである。


 レフェリングに関して、もうひとつ気がかりなのが、ここまで警告を受けた選手が複数いることだ。すでに武藤嘉紀が、ラウンド16のサウジアラビア戦で2枚目の警告を受け、この試合は出場停止。それ以外では、権田修一、酒井宏樹、堂安律、南野拓実、そして塩谷司が、それぞれ1枚ずつの「リーチ状態」となっている。準決勝に進出すれば警告は清算されるが、この準々決勝で2枚目のイエローカードをもらうと準決勝は出場停止。そうなれば、ウズベキスタン戦を除いてスタメンを固定してきた日本にとり、非常に大きな痛手となる。そんな背景もあり、これまでとはメンバーが入れ替わるという予想もあった。


 果たして、この日の日本代表のスターティングイレブンは、以下のとおり。GK権田。DFは右から、酒井、冨安健洋、吉田麻也、長友佑都。中盤はボランチに柴崎岳と遠藤航、右に堂安、左に原口元気、トップ下に南野。そしてワントップに北川航也。出場停止の武藤に代えて北川が入った以外は、サウジ戦とまったく同じメンバーである。正直、これには驚いた。サスペンドのリスクを考えるなら、たとえば酒井を休ませて、ウズベキスタン戦でアシストを決めた室屋成を起用してもよかった。あるいは南野と堂安を45分ずつ使うという手もあっただろう(サウジ戦の終盤では堂安がトップ下でプレーしていた)。


 日本とベトナムとの力関係、そして準決勝ではイランと当たる可能性が高いこと。これらの条件を考えるならば、この試合でメンバーを固定する必要はなかったように思う。もしも南野と堂安が累積警告となったら、森保監督はどうするつもりなのだろうか。さらにもうひとつ、疑問に感じたのが北川のワントップ起用。もともとツートップで生きるタイプの北川に、大迫勇也のような働きを期待するのが酷であることは、彼がスタメン起用されたオマーン戦で明らかになっている。いくらFWの枚数が足りないとはいえ、またしても北川をワントップで起用することには、やはり疑念を抱かざるを得ない。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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