40歳パッキャオ完勝で鳴らされた“世紀の再戦”メイウェザー戦へのゴング

杉浦大介

リマッチの歯車が動き出す可能性は高い

メイウェザー(左)陣営は再戦の可能性を今のところ否定しているが――。 【写真:ロイター/アフロ】

 こうして予想通りにブローナーを退け、周囲の興味は当然のようにパッキャオの今後に移っていく。ブローナー戦でも1000万ドル(約10億9000万円)以上の報酬を確約されたアジアの英雄は、試合後には上機嫌に現役続行を表明した。だとすれば、冒頭で述べた通り、この日はリングサイドで見守った宿敵メイウェザーとのリマッチ実現がなるかに注目が集まるのは当然だろう。

「(答えは)ノーだ。彼はもう引退したんだ。(再戦には)興味を持っていない」

 メイウェザー復帰の可能性について問われたメイウェザー・プロモーションズのレナード・エラービー社長は全体会見でそう明言していた。メイウェザー本人もテレビ放送中には試合後のインタビューに応じると伝えられながら、結局はリングに上がることはなかった。目立ちたがり屋の元5階級制覇王者が騒がなかったことで、再戦の意思は乏しいと見た人もいたかもしれない。

 しかし――。メイウェザー対パッキャオは2015年の初対戦では約6億ドル(約658億円)の興行収入を叩き出し、勝ったメイウェザーは2億ドル、敗れたパッキャオも1億ドル以上の報酬を手に入れた。再戦では興行収入は前回の半額以下だとしても、カジュアルなスポーツファンには依然として好まれる一戦が巨額を生み出すことに変わりない。それぞれ40歳を超えた両雄が、勝手を知った相手との“ラストダンス”でもうひと稼ぎに興味を示さないとはとても考え難いのが現実ではある。

 結局すべてはメイウェザーのさじ加減次第。ブローナー戦のパッキャオの出来は上々だったが、ポイントはそれが元来慎重なメイウェザーに脅威を感じさせるレベルだったかどうか。もしもそうではなかった場合、リマッチの歯車は遠からずのうちにゴトりと音を立てて動きだす。

 パッキャオが“メイウェザーの劣化版コピー”のようなブローナーに完勝したことは、現代を代表する2人のボクサーが織りなす第2章へのプロローグに過ぎない。再戦に興味がある人も、本来は無視したいボクシングファンも、結局はすべてを巻き込んで。ベガスで再びの狂乱が始まる可能性は高いのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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