帝京長岡の快進撃を支える3つの取り組み  高校サッカーの枠にとらわれず、8強進出

大島和人

3回戦の先発11名中、6名が中高一貫組

6年ぶりの選手権ベスト8入りを決めた新潟県代表の帝京長岡 【写真は共同】

 3日に3回戦を終えた第97回高校サッカー選手権大会で、帝京長岡(新潟)が6年ぶりのベスト8入りを決めた。1回戦で高知西(高知)を6−0と一蹴すると、2回戦は旭川実業(北海道)との17−16という「大会史上最長PK戦」をクリア。3回戦も長崎総科大附属(長崎)を2−1で下している。

 快進撃は深い理由がある。チームの主軸はMF谷内田哲平、FW晴山岬の2年生コンビだが、共に長岡ジュニアユースFCの出身。長岡JYFCは帝京長岡と同じグラウンドを使う関係の強いクラブで、3回戦の先発11名中6名が中高一貫組だ。

 最近は高校のサッカー部も中高一貫で強化を進めるチームが多い。ただ谷内田、晴山は幼稚園児時代からのチームメート。「3才、4才からずっと長岡JYFC」(谷内田)というから同じ一貫指導でも13年、14年のスパンだ。

 幼児にセレクション、スカウトがあるはずもなく、谷内田は「送り迎えがある」という素朴な理由で、長岡JYFC入りを決めた。才能を集めたのでなく「育てた」ところにそのすごみはある。

 彼らは小学生時代から全国区だった。2014年1月に開催された第24回全日本フットサル大会で3位に入ったのが新潟県代表のヴェールメリオ。これは長岡トレセンの選抜チームで谷内田や晴山、矢尾板岳斗ら長岡JYFC勢が主力だった。谷内田は津久井匠海(現横浜F・マリノスユース)、生井澤呼範(現鹿島アントラーズユース)らとともに、大会ベスト5に選ばれている。

フットサルとサッカーの「二刀流」で技を磨く

「大会史上最長PK戦」では、のべ19本に達したシュート全てが枠内だった 【写真は共同】

 長岡JYFCと帝京長岡はフットサル、サッカーの「二刀流」で知られている。彼らはU−12年代こそ3位にとどまったが、U−15年代、U−18年代ともフットサル日本一を経験。18年8月の第5回全日本U−18フットサル選手権大会では晴山が得点王、MVPにも輝いた。

 両チームの連係からは、過去にも小塚和季(大分トリニータ)のような人材が輩出されている。ただ現高2世代はそんな歴史の中でも特別。11人制も15年5月のJFAプレミアカップ2015で全国3位に輝いている。街クラブでありながら、Jの育成組織と互角以上に戦ってきた。

 フットサルはコート、ゴールが小さく、サッカーに比べてより緻密なプレーを要求される。晴山は11人制に生きているエッセンスをこう説明する。

「フットサルはゴールが小さい分、逆を突かなければ絶対入らない。キーパーの目とか重心を見て、どちらに打てば反応しづらいかを考えて、強いシュートを打っています。あとフットサルはトーキックでシュートを打つことがある。トーキックはあまり浮かないですし、スピードも出て、キーパーが取りづらい」

 晴山に限らず、帝京長岡の選手が「低く強くふかさずシュートを蹴れる」のは、フットサルで得たスキルかもしれない。2回戦のPK戦では、のべ19本に達したシュート全てが枠内だった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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