「春高よりもしんどい」直接対決を経て 洛南と東山、ライバルが紡ぐ物語
洛南主将が「一番しんどかった」と語る試合
洛南の主将が「一番しんどかった」と語るのは、東山高との京都対決だ 【写真提供:月刊バレーボール】
まばゆいライトが、練習時には少し気になったが、試合では少しも気にならない。そう言ったのは、洛南高の主将、山本龍だ。
全日本大学選手権準優勝の福山平成大学に2−0から逆転負けを喫し、「悔しい」と言いつつも、優勝を期待されたインターハイから着実にレベルアップした手応えをのぞかせ、来る春高に向け「狙うのは優勝しかない」と表情を引き締める。
そしてまた表情を緩め、今度はこう言った。
「春高よりも京都の対決が一番しんどかった。もう直接対決はやらへんでいいから、それはホント、うれしいです」
山本の言う“直接対決”の相手――。それは春高でも優勝候補に挙げられる、洛南にとって最も嫌で、最も警戒し、最も苦しめられたライバルの存在、東山高だった。
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「松永が来てくれるようになって、選手は毎回『今回は理生さん、どんな練習するんやろ』と楽しみにしているんです。でもそれは私も同じ。毎回、こんなやり方があるんや、とか、世界の考えはこうなんや、と勉強させてもらっていますよ」
漠然とした言い回しではなく、テンポやスロットといった世界のバレーボールと同じ言葉が当たり前に飛び交う。新人戦が楽しみだ、と言いながらも、春高の話になると豊田監督の表情にはまだ、悔しさが浮かぶ。
「狙い通りの形」が完成に近づいた矢先に……
東山は洛南に勝利するため、1年をかけて徹底的に準備を重ねてきた 【写真提供:月刊バレーボール】
2年生の正セッターがレシーブ練習の最中に右肩を負傷。痛みを押して2日後の練習試合に出場したがサーブを打つ際に肩が上がらず、トスを上げることもできない。一時は手術も余儀なくされるほどの重症だった。
さらにアクシデントは続き、11月5日にはサーブレシーブの要となる選手がバックアタックで足を捻り、はく離骨折。前衛3枚に加え後衛からのバックアタックも同じテンポで入る、豊田監督いわく「変幻自在のコンビバレー」の要となる2選手を大会直前で欠いて戦うことを余儀なくされた。
豊田監督はこう振り返る。
「いろいろなことを考えました。指導者として長いキャリアの中でも、一番大事な大会でけがをして選手が出られないのは初めてだった。私自身もショックでしたし、誰よりも選手がかわいそうだった。みんな『東山に入って洛南を倒したい』と入って来た子たちですから。出たかった、やってやりたかった、と何とも言えない悔しさ、屈辱やったでしょうね」
現在の3年生が2年生だった昨年の春高で、洛南は準優勝だった。そのチームに京都予選で勝って全国優勝を成し遂げるため、1年をかけて徹底的に準備を重ねてきた。相手のエース、セッターに十分な状態で攻撃をさせないようサーブの狙いを徹底し、「打てるならミスを気にせずどんどん打て」とジャンプサーブで攻めることを基本とし、そこからさらにブロックとレシーブの関係を構築した。
攻撃もミドルとサイド、バックアタックが同じタイミングで入り、相手の動きに迷いを与え、一辺倒にならないよう多彩な攻撃を繰り出し、スピードを生かしながら、高さも最大限に生かす。まさに狙い通りの形がようやく完成に近づいた。その矢先のアクシデントだった。
事実、昨年から優勝候補として全国に名を馳せていた洛南も、17年はインターハイ予選で東山に敗れ、国体出場も逃した。春高予選はフルセットの激闘の末に洛南が制したが、京都の決勝では常に顔を合わせる両校は誰よりも互いの手の内を知る相手だ。だからこそ、相手の攻略法ではなく、自チームのスキルの質を高め、守りに入るのではなく攻め続ける。そうすれば必ず洛南に勝てる。豊田監督はそう踏んでいた。