海外G1年間未勝利で終われない! 日本馬が意地を見せる香港国際競走展望

JRA-VAN

【香港カップ】日本勢に大きなチャンス、名手たちの駆け引きに注目

サングレーザーが香港Cの日本馬6勝目を達成するか 【Getty Images】

 G1昇格前を含めると過去に5勝を記録し、香港国際競走4レースの中で日本調教馬が最も活躍しているといえるのが香港C。2015年(エイシンヒカリ)と2016年(モーリス)に連勝し、昨年も3着ネオリアリズム、4着ステファノス、5着スマートレイアーと上位に食い込んでいる。好循環で来ている今年は6勝目(G1昇格後では4勝目)にかかる期待も大きい。

 当初の発表からエジーラ(アイルランド)が香港ヴァーズに回り、5日になってワーザーがケガで回避。今年の香港Cは9頭によって争われることになった。とりわけ一昨年のクイーンエリザベス2世Cでラブリーデイらを一蹴し、今年の宝塚記念でも豪脚を炸裂させて2着に追い込んだワーザーの不在は、2年ぶりの勝利を狙う日本勢には追い風だろう。

日本馬の最大のライバルとなりそうなのが、地元香港のタイムワープだ 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 レーティングでは連覇を狙うタイムワープと日本のサングレーザーが120で双璧。これに地元のノーザンスーパースターと昨年は香港マイルに出走したシーズンズブルームがレーティング118で続き、牝馬のためプラス4のディアドラ(113)も実質的にほぼ同格となっている。

 サングレーザーにとっては差し当たりタイムワープが最大のライバルになるが、天皇賞(秋)に続いてJ.モレイラ騎手を確保できたのは大きい。近走のタイムワープは勝つか大敗かの極端な結果に終始しており、マイペースで逃げられた2走前は1着、絡まれた前走は最下位に沈んでいる。絡んだ相手というのは今回も対戦する全弟のグロリアスフォーエバーだが、その背中にいたのがモレイラ騎手。前哨戦でライバルの脚力を量れた経験は生きるはずで、サングレーザーの差し脚をもってすれば仕掛けのタイミングひとつだろう。

ディアドラはどれだけの末脚を使えるか、今年絶好調ルメールの手綱にも期待がかかる 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 さらに後方からのレース運びになりそうなディアドラにとって、サングレーザーは第一に超えるべき手強い相手だが、対タイムワープという点では頼もしいガイド役にもなり得る。その動きに応じて捕らえ切るだけの末脚を発揮できるかの勝負になるだろう。昨季の香港で激しくリーディングを争ったZ.パートン騎手(タイムワープ)とモレイラ騎手、これに日本でリーディング独走のC.ルメール騎手(ディアドラ)が加わり、名手たちによる三つ巴の駆け引きは見応えがありそうだ。

 ステファノスはレーティング112で離されているが、4年連続の香港C参戦で経験値は地元馬をもしのぐ。近走は脚質的にも幅を感じさせるようになっており、タイムワープの出方次第で勝機が巡ってくることも。直線まで脚が溜まれば、W.ビュイック騎手の剛腕が物を言う。

 ノーザンスーパースターは未知の強豪といった存在。香港移籍前に南アフリカでG1を2勝しているが、11月25日の前走が約1年ぶりの実戦だった。軽めのハンデで勝ち馬から4馬身余りの6着に終わっており、今シーズンの目標はまだ先にありそうだ。地元馬シーズンズブルームは戦績こそマイラーのそれだが、昨季以降の計10戦で唯一の2000mが2月の香港ゴールドC。レコード決着の厳しい流れのなかで、タイムワープから1馬身差の3着に善戦しており、地元勢で最先着しても不思議のない実力を秘めている。

【香港マイル】年度代表馬に挑む3本の矢、レースの鍵は日本馬が握る

昨季の香港年度代表馬ビューティージェネレーションは今季も無敵の充実ぶりを見せ付けている 【Photo by Getty Images】

 この10年余り、香港マイルで圧倒的な勝率を誇る地元勢だが、今年もビューティージェネレーションが強力。ディフェンディングチャンピオンにして昨季の香港年度代表馬と、無敵の充実ぶりを見せている。レーティング126は出走メンバーの中で突出しており、対戦機会の多い香港調教馬の陣営は士気を保つのに精一杯という現状がある。

ペルシアンナイトは2000mでも好走できるスタミナをマイル戦でも生かしたい 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 しばしば上位独占も実現する地元勢の内部で温度差が激しいなら、外国勢が割って入るチャンス。打倒ビューティージェネレーションの先頭に立つのは日本調教馬の3頭だ。ペルシアンナイトは出走馬の中で2位のレーティング119。マイルCSでは2年連続で優勝争い(1勝、2着1回)を演じ、2000mの皐月賞と大阪杯でも2着があるなどG1実績は申し分ない。マイルG1では厳しい展開になるとスタミナを問われるだけに長めの距離実績があることは強調材料。ビューティージェネレーションの実力は香港史上最強マイラーのエイブルフレンドに肩を並べるとも称されているが、そのエイブルフレンドを香港マイルで破ったモーリスも、後に2000mの天皇賞(秋)と香港カップを連勝とスタミナがあるタイプだった。

前走マイルCSが不完全燃焼だったモズアスコット、今度こそ能力全開だ 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 安田記念の覇者モズアスコットは、前走のマイルCSでは不利を受けて大敗しており、ここは巻き返しへ力が入る一戦だ。重賞でもオープン特別でも勝ち切れず、安田記念で初G1制覇したときは9番人気。今回もオッズ的にはビューティージェネレーション一強という構図で挑戦者に徹することができるだけに、自分の競馬で思う存分に実力を発揮してほしい。

久々のマイル戦となるヴィブロスだが、引退レースに花を添える快走を期待 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 ヴィブロスは今回が引退レース。マイル戦は2年半以上も経験しておらず、流れに対応できるかは課題になるだろう。ただ、ドバイターフ(芝1800m)制覇など海外遠征の実績や経験値では一日の長があり、ドバイではリブチェスターら欧州の強豪マイラーを一蹴した。また、全姉ヴィルシーナはヴィクトリアマイルを連覇し、牝馬の世界では一時代を築いた名マイラーでもある。ラストランとは言えまだまだ体も若く、あっと言わせたドバイターフの再現を期待したい。

 この他の外国勢では豪州のカミンスルーがレーティング118だが、9月から5戦を消化して成績も下降気味。欧州勢は香港マイル未勝利で、ビートザバンク以外の2頭(インズオブコート、ワンマスター)には距離もやや長そうな印象だ。

 ビューティージェネレーションに恐れおののく香港勢だが、もともとマイル〜短距離の層は厚く、日本馬ら外国勢が王者を負かしにいき、もつれた展開になったときには漁夫の利を得る可能性は捨てきれないだろう。

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