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準決勝で感じた「開催地問題」の難しさ
天皇杯漫遊記2018 仙台対山形

鹿島の勝利で前倒しになった天皇杯

今季のホーム最終戦で初のファイナル進出を果たした仙台。決勝の相手は「アウェー」での浦和となった。
今季のホーム最終戦で初のファイナル進出を果たした仙台。決勝の相手は「アウェー」での浦和となった。【宇都宮徹壱】

 師走に入って最初の週末に、Jリーグのレギュラーシーズンが終了。残すは8日のJ1参入プレーオフ決勝を残すのみとなった。その隙間を埋めるように、5日の水曜日に天皇杯の準決勝2試合が行われた。カードは、浦和レッズ対鹿島アントラーズ、そしてベガルタ仙台対モンテディオ山形。キックオフはいずれも19時である。この日は、3年ぶりに天皇杯で実現した「東北ダービー」を取材するべく、新幹線やまびこで北を目指した。この試合について語る前に、やはり天皇杯の日程について触れなければなるまい。


 今大会は当初、準決勝が16日の日曜日、そして決勝が24日の祝日に開催される予定であった。天皇杯決勝は元日に行われるのが通例だが、来年は1月5日からアジアカップが開催されるため、日本代表のスケジュールを優先させる形となった(4年前も同様の措置がとられている)。ところがACL(AFCチャンピオンズリーグ)で優勝した鹿島が、直後のヴァンフォーレ甲府との天皇杯準々決勝にも勝利。このためFIFAクラブワールドカップとのバッティングを避けるべく、天皇杯のスケジュールはさらに前倒しされることになった。結果として、準決勝は12月5日、決勝は9日となったのである。


 今大会の日程については、決勝でもあらためて言及するが、今回もう1つ触れておきたいのが準決勝の開催地。4強が決まってから、準決勝の2試合はカシマサッカースタジアム(カシマ)とユアテックスタジアム仙台(ユアスタ)で行われることが発表された。これまで天皇杯の準決勝は、出場チームのホームタウンに頓着することなく、関東と関西のスタジアムで行われることが多かった。しかし今大会は、いずれも当該クラブのホームで開催されることになり、平日開催にもかかわらず多くの観客を集めることとなった(カシマの入場者数は1万3949人、ユアスタは1万6604人)。


 とりわけ仙台対山形という好カードが、ユアスタで開催されたことは画期的であった。もちろん両クラブのサポーターにとって、アクセスしやすいのはありがたい話。だがそれ以上に注目すべきは、98回にわたる天皇杯の歴史で、初めて東北勢が決勝進出を懸けて戦うという事実である。その舞台が関東、あるいはさらに遠い場所に設定されていたら、当事者にとって興ざめなものとなっていただろう。準決勝が16日の日曜日、それも昼間の開催であったのならば、まだいい。しかし今回は平日の夜に行われる、ファイナルを懸けた東北ダービーである。「ならばユアスタで」という判断が働くのも、無理もない話であろう。

ゴールの応酬となった前半とノーゴールの後半

ジャーメイン良(写真手前)の1ゴール2アシストの活躍もあり、仙台が接戦を制した
ジャーメイン良(写真手前)の1ゴール2アシストの活躍もあり、仙台が接戦を制した【写真は共同】

 キックオフからの序盤10分は、「ホーム」の仙台が山形を圧倒した。山形が最後に公式戦を戦ったのは、11月17日。この日行われた準決勝の18日前である。もちろん練習試合はこなしていただろうが、やはり公式戦特有のインテンシティーとJ1のスピードに戸惑ったのは致し方ない。仙台は前半13分、先制点と思われたFW石原直樹のシュートが味方のオフサイドと判定を受けたものの、わずか1分後にはMF中野嘉大の左からのクロスにFWジャーメイン良がボレーで反応。今度は文句なしのゴールとなった。これで天皇杯3試合連続ゴールとなったジャーメインは、その後も全ての得点に絡むことになる。


 先制した後も仙台の攻勢は続いた。前半18分、中野からジャーメインへのホットラインから、最後はMF矢島慎也がミドルシュート。山形の選手に当たってコースが変わり、山形GK児玉剛の逆を突くようにゴールに吸い込まれていく。仙台のワンサイドゲームの予感が漂う中、山形がダービー戦の意地を見せたのは32分。DF熊本雄太の右サイドからのクロスに、中央で待ち構えていたFW阪野豊史がヘディングで1点を返す。この一発で、それまで受け身だった山形が反抗への糸口をつかんだかに見えた。


 しかし、それからわずか4分後の前半36分、再び仙台が突き放しにかかる。左CKを矢島が蹴り込むと、ファーサイドでジャーメインが頭で折り返し、最後はDFの平岡康裕が右足ダイレクトでネットを揺らす。これで3−1。「やはり厳しいか」と思われた前半終了間際の44分、さらなるドラマが待っていた。味方のクリアボールから相手の裏に抜けた阪野が、ペナルティーエリア内から絶妙なループシュート。ボールは仙台GKシュミット・ダニエルの頭上を超え、そのままゴールインとなる。前半だけで5つのゴールが決まる予想外の展開。前半は仙台の1点リードで終了する。


 後半に入ると、相手のスピードに慣れてきた山形が主導権を握った。対する仙台はというと、後半20分から27分の間に、一気に3枚のカードを切ってきた。とりわけ、クローザーの役割を担うと思われていたMF富田晋伍が、矢島に代わって後半27分にピッチに送り込まれたのは意外。この点について仙台の渡邉晋監督は、「3人ともアクシデント。ああいった形でカードを切らざるを得なかった」と会見で打ち明けている。山形にとってはチャンスであったが、木山隆之監督いわく「何とか追いつく勢い、得点する力が出しきれなかった」。結局スコアは3−2のまま、仙台が逃げ切りに成功した。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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