連載:Jの未来を担う高校生たち

C大阪からの「移籍」を決断した鈴木冬一  自らの選択を示すため、選手権で日本一に

川端暁彦
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ユースから高校への「移籍」が一つの流れに

C大阪ユースから長崎総科大附へ「移籍」したMF鈴木冬一。多様な育成、ハイブリッドな選手というのも近年の選手権におけるトレンドの1つかもしれない 【川端暁彦】

 今年のワールドカップ(W杯)ロシア大会を戦った日本代表を思い出してみると、中盤中央に陣取ったのは長谷部誠と柴崎岳のコンビだった。前者は藤枝東高校、後者は青森山田高校の出身である。そして左サイドには野洲高校出身の乾貴士。中央の2人はどちらも高校サッカー選手権の応援リーダー(選手権は有名選手をポスターなどに起用している)になった経験のある選手であり、乾は今年の応援リーダーである。

 一般的な高校サッカーのイメージは熱さや激しさが先行するだろうから、テクニカルな要素の強い中盤の選手が育つ感覚はないかもしれない。ただ、「うまい選手を戦えるようにするのが高校サッカー」(青森山田・黒田剛監督)という一面もある。特に中盤の選手に多様な能力が求められるようになった現代サッカーだからこそ、このポジションにも期待値の高い選手は多い。

 そして多様な育成、ハイブリッドな選手というのも近年の選手権におけるトレンドの1つかもしれない。先鞭(せんべん)をつけて流れを作ったのは、U−21日本代表のMF神谷優太(愛媛FC)だろう。東京ヴェルディユースから高校2年生の冬に青森山田へ「移籍」。プロ入りを勝ち取って、年代別代表に選ばれるようにもなったモデルケースができたことで、一つの流れが生まれている。

 今年も各地でこうした「移籍」は起きていて、単純に出場機会を求めるものから、クラブ内での評価を踏まえてプロになるための道を開こうとチャレンジするパターンまで、さまざまである。クラブチームと部活が並行して存在しているサッカーの世界観は日本の高校スポーツの中でもちょっと異端なところがあると思うが、単なる競合関係ではない、ある種の補完関係になってきている面もある。

 そして今年の「移籍組」で最もネームバリューのあった選手はセレッソ大阪U−18から長崎総合科学大学附属高校へと移ったMF鈴木冬一だろう。昨年のU−17W杯日本代表メンバーであり、そのニュースは驚きをもって迎えられた。話が本格化するまでC大阪側も把握していないという異例の流れだったが、飛躍を期す本人の意思は固かった。
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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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