3連覇中アルバートのマラソン適正に納得 ステイヤーズSの好走パターンを考察する

JRA-VANデータラボ

過去10年のデータから考える

 今週は土曜日にステイヤーズSが行われる。平地では最長距離となる芝3600mのマラソンレースだ。現在、アルバートが3連覇中で、今年も出走を予定しているようだ(本稿執筆の11/23時点)。いつものように過去10年の結果を振り返り、同レースについて考えてみたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

過去10年のステイヤーズSで3着以内の馬

表1 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表1は過去10年のステイヤーズSで3着以内に入った馬。冒頭で述べたように2015年から2017年にかけてアルバートが3連覇中だ。同一馬が重賞で2回好走するケースはよくあるが、3回ともなるとめずらしい。しかもこのレースではアルバートだけでなく、デスペラードやトウカイトリック、ファタモルガーナが3回も名前を連ねている。11年以降の好走馬を見ると、同一馬の好走が顕著だ。レースの位置づけなどは以前から変わっていないが、ここを目標にしてくるケースが増えているのかもしれない

 トウカイトリックはこのステイヤーズSだけで7回もの出走があり、【1.1.2.3】という成績を残した。13年のステイヤーズSは11歳の時に出走し、7番人気で3着の結果を残した。これだけの高齢で現役を続けることは大変で、同馬は特別だったのかもしれない。ただ、ステイヤーズSが相当なスタミナを問われるレースであることは間違いない。キャリアや適性が重要であり、過去に1度でもステイヤーズSで好走経験がある馬には注目した方がいいだろう。

 その他の好走馬を見ると、芝3000m以上の重賞で好走経験がある馬が多い(表1・背景黄色)。17年2着のフェイムゲームはダイヤモンドS優勝に加え、天皇賞(春)が2着。11年1着のマイネルキッツは09年の天皇賞(春)で1着、09年1着のフォゲッタブルと08年2着のフローテーションは前走菊花賞2着の3歳馬だった。京都と中山、または東京の比較ではコース形態はかなり異なるが、芝3000m以上の重賞においては関連性が高い。レース数そのものが少ないため、似たようなメンバー構成になることもあるが、近走成績が不振の馬でも変わり身を見せてくることがある。

 あとは前走アルゼンチン共和国杯で3着以内に好走していた馬や、前走1600万クラスやOP特別で善戦していた馬が多い。前走秋のG1を使っていた馬は少ない印象だ。また、過去10年の好走馬はすべて牡馬・セン馬。牝馬は出走そのものが少ないが、好走を果たしていない。

ステイヤーズS好走馬の父と母父(過去10年)

表2 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 次は血統面から考察してみたい。表2ではステイヤーズS好走馬の父と母父を記した。数だけを見ると、父サンデーサイレンス系が18頭と6割を占める。ハーツクライやディープインパクト、ネオユニヴァースなど、いろいろなタイプがいる。有力な系統であることは間違いないが、芝中距離以上ではどのレースもこうした結果になりやすい。面白い特徴とは言い難い。そこで、今回注目したいのはミスタープロスペクター系だ。同系統は芝・ダートどちらもこなせるが、どちらかと言うとスタミナよりもスピードが持ち味だ。にもかかわらずこの長距離戦で好走馬を出している。ただ、母父としては1頭もおらず、父として実績がある。過去10年では、アドマイヤドンとエルコンドルパサーの名前がある。この2頭はともに現役時代は日本で走り、G1勝利の実績を残した。スピードだけでなく、スタミナやパワーも兼ね備えていたイメージがある。

表3 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 そこでさらに、アルバートの父でもあるアドマイヤドンの血統を深く掘り下げてみたい。5代血統表を見ると、父はティンバーカントリーで、母父はトニービン、母の母父はNorthern Dancer(ノーザンダンサー)となっている。結論から言うと、このトニービンとノーザンダンサーの血が、ステイヤーズSにおいてかなり重要となる。他の好走馬の血統をあらためて調べると、デスペラードやフォゲッタブルの母父がトニービンだ。ノーザンダンサー系は、本来であればリファール系やサドラーズウェルズ系など、細かく分類して考えた方がいいことが多い。しかし、広い意味でのノーザンダンサー系と考えると、表2で示したようにかなりの馬が該当する。母父ノーザンテーストやエリシオは当然ながら、父ラムタラやキングヘイローなども該当する。

 さらにアルバートの母父はダンスインザダーク。サンデーサイレンス系の中では特に長距離に適性がある血統だ。つまり、アルバートという馬にはステイヤーズSと相性のいい血が凝縮されているというわけだ。そう考えると、目下の3連覇も納得といったところか。長く現役を続けることができれば、トウカイトリック以上の好走回数を記録することも可能かもしれない。

文:小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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