原口元気「僕も3人を追う立場」 代表“準主力”からの脱出へ燃やす闘争心

元川悦子

キルギス戦では状況に応じてプレーを変化

20日のキルギス戦で先発出場した原口元気(写真)。慣れないメンバー構成の中、臨機応変にプレーに変化をもたせた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 初キャップの山中亮輔、日本代表初先発の守田英正らフレッシュな面々が豊田スタジアムのピッチに並んだ20日のキルギス戦。この日が国際Aマッチ40試合目の原口元気はスタメン11人で最も実績のある選手だった。

「もしかしたら明日は自分が一番経験あるメンバーになるかもしれない。『自分が一番頑張る、一番走る』くらいの気持ちで、チームを引っ張っていきたい」と前日に強調していた通り、彼には半年前に16強入りした2018年ロシアワールドカップ(W杯)主力組としての意地と誇りを示すことが強く求められた。

 慣れないメンバー構成の中、4−2−3−1の左MFに陣取った原口は序盤から絞り気味のポジションを取った。初めてタテ関係を形成した山中のタテへの推進力を引き出しつつ、三竿健斗と守田の新ボランチコンビをサポートしようという意図があったからだ。

 この位置取りは4日前の16日のベネズエラ戦で途中出場した時とは明らかに違っていた。佐々木翔とタテに並んだこの試合の原口はタッチライン際に張り、タテの推進力を出すべく積極的にドリブルで仕掛けようとしていた。守備の時には最終ラインまで下がって佐々木のフォローも努めていた。

「ボールを拾う、ボールを運ぶっていうのはしんどくてもやらなきゃいけないし、佐々木君が相手と1対1でやってるところを、1対1にさせないように帰ってあげるとか、そういう細かいところはやろうと思っていました」と説明するように、状況に応じて自らのプレーを臨機応変に変化させられる。そのあたりが彼の賢さなのだろう。

「攻撃陣カルテット」との競演不足

(左から)大迫、堂安、南野、中島の「若手カルテット」が躍動する代表において、原口は彼らとのプレー時間が少なく十分に“融合”できないでいる 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 こうした戦術眼と状況判断力が奏功し、山中は開始2分に先制弾をゲット。試合を通して、原口と山中の左サイドコンビが効果的な攻めを構築し続けた。中盤の関係性もスムーズになり、時には最前線に陣取った杉本健勇をフォローするなど、背番号8がチームを円滑に回したところは少なからずあった。

 そして前半19分には、自ら奪ったFKを直接狙いにいく。「思い通り飛んでいない」というミスキックは相手GKパベル・マティアシュがファンブルし、そのままゴールマウスに吸い込まれた。ロシアでのベルギー戦の先制弾以来、半年ぶりの代表8得点目を本人は「カウントしないで」と苦笑したが、1点は1点。数字が残ったことは、前向きに受け止めていいはずだ。

 結局、原口は後半27分までピッチに立ち、豊富な代表経験と能力の高さを随所に見せた。ただ、1つ残念だったのは、森保一監督が攻撃の軸と位置づける大迫勇也、中島翔哉、南野拓実、堂安律の「攻撃陣カルテット」とのプレー時間が少なかったこと。大迫の3点目の直後に中島との交代を強いられた時には、不完全燃焼感も覚えたはずだ。

「主力と融合する時間が少ない? まあ、落ち着いていきましょう(笑)。まだ全然、時間はあるから。もちろんレギュラーから外された悔しさはあるし、それが晴れたわけじゃないけど、本番は(1月の)アジアカップ。そこで奪い返すつもりでいますよ。自分はホントに厳しいところで力を発揮できると思ってるから」

 静かな語り口の中にも闘争心をぎらつかせた原口。「準主力からの脱出」をもくろむ男の巻き返しはここからが本番だ。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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