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宇野昌磨、試合運びの難しさはやりがいに
NHK杯FSでつかんだ課題解決の糸口

「自分を信じる」をテーマとする宇野昌磨

フリーでの1本目の4回転トウループには加点がつけられ、高い評価を受けた
フリーでの1本目の4回転トウループには加点がつけられ、高い評価を受けた【坂本清】

「一回目は、なんかすごく自信があったんですよね」


 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯で優勝を決めた後、フリースケーティングで計2本入れている4回転トウループについて、ミックスゾーンに姿を現した宇野昌磨はそう口にした。現在の宇野にとり、“4回転トウループの回りすぎ”は最大の課題ともいえる。練習では成功の確率が上がっている4回転トウループだが、試合で跳ぶと体が動きすぎ、回転しすぎて失敗につながっているというのだ。


「結構、練習通りできたという感じだった。一回呼吸を置いて跳びにいったんですけれど、回りすぎてしまって。ただショートと違うのは、分からないから思い切りいったジャンプとは違う、いつもの練習をなるべく再現しようとしたトウループだったこと」


 この4回転トウループには3.39の加点がつき、高い評価を受けている。なんにせよ、宇野にとってNHK杯のフリーで1本目の4回転トウループは、課題解決の糸口となるジャンプだった。


 豊富な練習量で世界トップレベルのスケーターになった宇野にとり、「練習したことを試合で出し切る」ことは常にテーマであり続けてきた。ショートプログラム4位で迎えた2016年世界選手権(ボストン)のフリーでは、思うような演技ができず総合7位に終わった。キスアンドクライで涙した経験なしには、現在の宇野はなかっただろう。


 練習の虫といわれる宇野が、最大の努力を積んで迎えた初の大舞台で、練習の成果を出し切ることができなかったのだ。その苦い経験を生かしているからこそ、今の宇野がある。平昌五輪銀メダリストとなって迎えた今季もなお、宇野は「自分を信じる」をテーマとしている。練習でできたことを試合でも確実にやり遂げることが、宇野にとって、今も目の前にあるテーマなのだ。

練習でのハイレベルな演技を試合でも

宇野には自らの課題に正面から向き合っていく覚悟がある
宇野には自らの課題に正面から向き合っていく覚悟がある【坂本清】

 NHK杯のショート、宇野は4回転トウループで転倒している。演技後、体が動きすぎないよう、ショートの4回転トウループを疲れの出る3つ目(ショートのジャンプ要素は3つなので、最後になる)のジャンプに持ってくる可能性を口にしていた。しかし翌日、宇野はその考えを撤回する。


 宇野を指導する樋口美穂子コーチは、フリー終了後「昨日(ショートが)終わった時点では『絶対に回りすぎる』」と言っていた」と話す。


「夜に『やっぱり3つ目にしようか』という話をしていたんですけれど、今日になって急に『やっぱり、このままで』と言ってきた。


 アップでも動きすぎると駄目とか、いろいろなことがあるので……。その辺はやっていかないと分からないので、自分の思う通りにやらせています」と言う樋口コーチは、ここでも宇野の意志を尊重した。フリー終了後の囲み取材で、宇野は次のように語っている。


「ショートの(4回転)トウループの失敗が多すぎるので、昨日は『構成を変える』とか、いろいろ言ったんですけれど……。昨日からずっと考えて、今日の公式練習の時、構成を変える前に、やはりもう数回このまま調整したいなと。自分の気持ちをどうコントロールするか、コントロールできないなら、ちょうどいいところに持っていくにはどうするか。やはり向き合っていきたいなと思いました」


 元々練習量が多く、しかも最近はその中身も濃くなっているという宇野は、その練習でできているハイレベルな演技を、いかにして試合で出すかというテーマに、正面から向き合う覚悟を決めた。

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(シンクロナイズドスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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