Rソックスは2018年最強チームだった “119通り”の強さで達成したWS制覇

杉浦大介

POでは不振だったプライスを信じ抜く

3試合に登板し、防御率1.98と大車輪の活躍を見せたデービッド・プライス 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 一方、投手陣からは1人の左腕エースが躍り出て、優勝を目指すチームには必須の大黒柱役を果たした。昨季までプレーオフでの先発時に所属チームが0勝9敗という信じ難い成績だったプライスが、ワールドシリーズでは3試合(2先発、1救援)で2勝、防御率1.98と大車輪の活躍。リーグ優勝決定シリーズ第5戦まで含めれば、3先発機会連続で相手を3安打以内に封じ込めたことになる。特に中3日で臨んだ28日のワールドシリーズ第5戦では、7回3安打1失点とほぼ完璧な投球でドジャースの息の根を止めた。

「今季を通じて、多くの人が彼を諦めようとした。ヤンキース戦で打たれた後もそうだった。ただ、私たちは彼がメジャーでも最高級の投手だと分かっていた。彼は勝利を熱望していて、ここでついに世界一になったんだ」

 コーラ監督が振り返った通り、実はプライスは現地時間10月6日のヤンキース戦で1回2/3を3失点、同14日のアストロズ戦でも4回2/3を4失点と痛打されていた。今となっては信じ難いことだが、「プライスを先発から外すべきではないか」といった声まで出ていたのである。

 そんな周囲の雑音には惑わされず、プレーオフの絶望的な実績も無視し、コーラとレッドソックスは通算143勝のサウスポーを信じ続けた。期待に応え、プライスはついに実力を発揮し始める。33歳の左腕が切り札になったことで、ネーサン・イオバルディ、リック・ポーセロ、やや不調だったキンブレルといった他の投手たちの負担も軽減。2018年の最強軍団は、セールに続くエースがステップアップしたことでついに完成形に至ったのだ。

「違う時代のチームを比較しても意味がない。僕たちはとても良いチーム。言えるのはそれだけだ。(ただ)僕が所属した中では間違いなくベストチームだ」

 試合後、“レッドソックスは史上最高のチームか”と聞かれ、プライスはそうはぐらかした。実際に“Best of all time(史上最高)”の議論は不要なもの。それでも1つだけ確かなことは、2018年のベストチームの力量が今後も永く語り継がれていくだろうということだ。

 多くの役者をそろえたレッドソックスは、今季を通じ、119通り(シーズン108勝+プレーオフ11勝)のやり方で強さを誇示してくれた。ケミストリーに裏打ちされた層の厚いプロ軍団。その鋼のような強さは、さまざまな形で分析され、語り継がれ、いつしか時を越えていくはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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