可視化して振り返るドラフト会議 満点は中日、課題残した球団は?

ベースボール・タイムズ
 2018年プロ野球ドラフト会議が25日に行われ、本指名で計83選手が指名を受けた。逸材がそろった高校生では、4球団競合で根尾昂(大阪桐蔭)が中日、小園海斗(報徳学園)は広島、3球団競合で藤原恭大(大阪桐蔭)は千葉ロッテがそれぞれ交渉権を獲得。吉田輝星(金足農)は外れ1位で北海道日本ハムが単独指名。その他、松本航(日体大)、辰己涼介(立命大)など、多くの大学生、社会人が即戦力の期待を受けて指名を受けた。

 では今回、各球団はどのようなドラフト戦略を立てて指名したのか。チームの“穴”は果たして埋まったのか。右投手、左投手、捕手、内野手、外野手別の年代構成をもとに、今回のドラフト補強を振り返っていきたい。

(注)選手は満年齢で分布。育成選手、外国人枠の選手を除く。

広島:“後継者”獲得で狙い通りの指名!

【ベースボール・タイムズ】

 1位で4球団競合の末に高校生ナンバーワンショートの小園海斗の交渉権を獲得しただけでなく、3位で長打力自慢の林晃汰(智辯和歌山)、4位では身体能力が高く“二刀流”の中神拓都(市岐阜商)という素材型の高校生内野手を積極指名。欲していた田中広輔、菊池涼介の後継者を手に入れ、育成への意欲を見せた。

 また、緒方孝市監督が望んだ即戦力投手として島内颯太郎(九州共立大)を指名。来季への準備も怠らなかった。欲を言えば左投手も加えたかったところだが、今回は小園の当たりクジを引いただけで成功と言いたい。大方、狙い通りのドラフトだっただろう。

ヤクルト:左2枚&外野2枚で穴埋めには成功!?

【ベースボール・タイムズ】

 1位指名で根尾昂、上茶谷大河(東洋大)と2度クジを外した後に即戦力右腕の清水昇(国学院大)を指名。その他、2位でパワフルなスイングが魅力の右のスラッガー、中山翔太(法政大)を指名し、3位以降では投手を計4人指名し課題の投手力強化を目論んだ。

 特に、坂本光士郎(新日鐵住金広畑)、久保拓眞(九州共立大)と左を2枚加えたことで不足部分を補い、4位の濱田太貴(明豊)の指名は高齢化する外野手の若返りという意味で理にかなっている。捕手は育成での指名となったが、チームの穴埋めには成功したと言えるだろう。後は、質の問題。結果が出れば、2度のクジ外れの悪い印象は忘れ去られる。

巨人:左投手&若返りも目玉となる次代のスターは!?

【ベースボール・タイムズ】

 1位でチームの補強ポイントだった左の即戦力、高橋優貴(八戸学院大)、2位では坂本勇人の後継者として高校通算34本塁打とパンチ力のあるリードオフマン、増田陸(明秀日立)を指名。3位以下でも右の直江大輔(松商学園)、左の横川凱(大阪桐蔭)に“九州のゴジラ”こと松井義弥(折尾愛真)という将来性のある高校生を並べた。

「左の補強」と「若返り」という狙いは見えたが、1位クジで根尾昂、辰己涼介を外しており、原新体制の目玉となる「次代のスター」の指名には至らなかった。理想は1位・根尾、2位・高橋だったはず。ただ、高校生の育成に成功すれば印象は大きく変わる。将来に期待したい。

DeNA:即戦力と将来性のバランス良し!

【ベースボール・タイムズ】

 1位クジで小園を外した後、2度目の入札で上茶谷大河(東洋大)の交渉権を獲得。高い完成度で1年目から右の先発として計算できる投手で、3位の大貫晋一(新日鐵住金鹿島)も即戦力として期待できる。

 その他、2位で強打の内野手、伊藤裕季也(立正大)を指名した他、4位以下で高校生を2人加えチームバランスを整えることに成功した。勝又温史(日大鶴ケ丘)は投手指名だが打者としても魅力で将来性抜群。高校生の左投手に地元・神奈川の高校出身者も加えたかったが、上茶谷が1年目から先発ローテ入りして及第点、5位指名の益子京右(青藍泰斗)が正捕手候補として成長すれば成功と言えるドラフトだろう。

中日:「根尾+α」の満点ドラフト!!

【ベースボール・タイムズ】

 4球団競合の末に根尾昂(大阪桐蔭)の交渉権を射止め、与田剛新監督は会心のガッツポーズ。上記の表では内野手としてカウントしたが、「本人の意思を尊重したい」と二刀流を認める方針で、与田監督は「1分1秒でも早く契約して欲しい」と新スター誕生へ向けて高揚感を口にした。

 さらに2位で大器の剛腕、梅津晃大(東洋大)の指名に成功し、3位でも最速152キロの勝野昌慶(三菱重工名古屋)と大満足の指名。大きな穴であった若手捕手には4位で石橋康太(関東一)を指名できたことも非常に大きい。若手野手が不足しているチームの現状を考えると、もう少し多くの選手を指名しても良かったが、それでも理想通りの満点ドラフトと言えるだろう。

阪神:センターラインを強化!奮起に期待!

【ベースボール・タイムズ】

 最初に藤原恭大を狙い、次に辰己涼介を入札したが、ともに失敗。外野手にこだわった指名に強いチーム方針が現れたが、結果的には事実上3番手評価だった近本光司(大阪ガス)の交渉権を獲得した。加えて、2位で小幡竜平(延岡学園)、3位で木浪聖也(ホンダ)と遊撃手を指名してセンターラインを強化。左腕・川原陸(創成館)も指名し、フレッシュな高校生2人を指名した点もチームの補強ポイントに合致している。

 だが、捕手は育成指名に留まり、何より全体的に小粒の感は否めない。現段階で失敗だったとはもちろん言えないが、最下位に沈んだ空気をドラフトでガラリと変えることはできなかった。選手たちの奮起に期待したい。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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