村田諒太がラスベガスで成すべきこと KO劇で近づく“その先のプラン”

杉浦大介

王者が思い描くゲーム運び

「強いパンチを打ち込んで、ぶん殴ってやりたい」と話す村田。鮮やかな右ストレートでKO劇を演出できるか 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 もっとも、騒ぎ立てる周囲を尻目に、心強いのは今戦に集中する村田自身の姿勢にはまったくブレが見られないことだ。こともあろうにブラントと同じステージに上がった18日の会見時にも未来についての質問が飛んだが、王者は「この試合に集中して、この試合の結果ですべてが変わる。先のことはまったく考えてないですね」と一蹴。アマ、プロを通じて数々の大舞台を経験してきた32歳は、先を見すぎることのリスクをよく知っているのだろう。そして、冒頭で述べた通り、勝つだけでなく、内容、見栄えが重視されることも熟知しているようである。

「(KOは)前半はないと思います。前半はしっかりと相手のパンチを見切ることが大事。中盤以降、しっかりとプレッシャーをかけ、強いパンチを打ち込んで、ぶん殴ってやりたいなと思います。(KOパンチは)僕は右ストレートか左ボディでしか倒せないですから」

 村田本人がそう述べている通り、アマキャリアの基盤もあるチャレンジャーは前半であっさり倒せるレベルの選手ではあるまい。互いの距離を探り合うペース争いを経て、後半勝負になることが濃厚。定評あるブラントのハンドスピードに惑わされず、村田は自らが思い描く青写真通りに相手を追い詰められるか。中盤以降に山場を作り、アメリカのボクシングファンを感嘆させるようなKO劇を演出できるか。 

 内容が問われる一戦で実際に綺麗にフィニッシュするのは簡単ではないが、ビッグファイトの舞台に立つような選手にはそれができるもの。村田がテストにパスできるかどうか、世界的な舞台に送り出せる選手なのか、答えがまもなく見えてくる。明日、きらびやかなラスベガスのリングで――。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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