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村田諒太がラスベガスで成すべきこと
KO劇で近づく“その先のプラン”
前日計量でにらみ合う王者・村田諒太(写真左)と挑戦者・ブラント。村田は2度目の防衛戦に臨む
前日計量でにらみ合う王者・村田諒太(写真左)と挑戦者・ブラント。村田は2度目の防衛戦に臨む【写真は共同】

「多くの方に来ていただき感謝しています。絶対に倒します」


 10月19日(現地時間)、ラスベガスのパークホテルで行われた前日計量後、WBA世界ミドル級正規王者・村田諒太(帝拳)は力強くそう述べた。そのあとに「保証すると言われたら難しいですけど、(KOを)狙います」と付け加えたのはいかにも思慮深いこの選手らしかったが、それでも“KO宣言”と言っていいのだろう。その言葉からは、今週末の自身の役割をしっかりと理解していることが見て取れた。

世界的に注目こそされていないが……

 この日の計量を村田は159.2パウンド(約72.2キロ)、ロブ・ブラント(米国)は158.4パウンド(約71.8キロ)で無事に突破し、ステージはセットされた。明日の夜、WBAの指名挑戦者を相手に行われる2度目の防衛戦は、日本人王者が真価を証明する舞台である。


 正直、世界的に注目されているファイトとはまだ言えず、ラスベガスを訪れている関係者の9割方が日本人。20日にはオーランドでワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)の第1ラウンド、ボストンでもWBO世界ミドル級王座決定戦などが予定されていることもあって、米国内の主要メディアはベガスではほとんど見かけない。


「普段と何も変わらないですよ。日本人の記者がこんなに来てくれているので、あんまり変わらない。米国でやっているという感じはそこまでない」


 18日の会見後には村田本人もそう述べていたほど。ただ、こんな状況を奇異に感じる必要も、残念に思う必要もない。ローカル色が極めて濃くなるのは移民の国であるアメリカの興行ではあることで、大切なのはこの一戦が『ESPN+』でプライムタイムに全米生配信されること。たった一戦のインパクトで評価、興行価値が大きく変わるのがボクシング界の特徴であり、端的に言って、米国内ではまだ高いとは言えない村田の注目度を大きく引き上げるために今回の試合は組まれたのである。

挑戦者は“先の話”に「ちょっと失礼だ」

 現場ではやはり村田が有利と目されており、本人の言葉通りにKOで決着をつけることを予想する声が多い。そして、ボクシングファンは誰もがご存知の“その先のプラン”についてもすでに盛んに語られている。


「土曜日の試合が終われば、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)と来年の早い時期に対戦できるように交渉を始めたい。(ゴロフキンのプロモーターの)トム・ローフラー、帝拳ジムとも話をする。早くて来年の1〜3月くらいになるだろう」


 アメリカ国内での村田のプロモート権を持つトップランク社のボブ・アラムは、18日の会見時にもそう繰り返していた。そんな具体的な言葉が示す通り、ゴロフキンが挑戦者として村田に挑む一戦はもう手の届くところにある。


 来春には37歳になるミドル級の元帝王はもともと日本でのビッグマネーファイトに色気を見せており、先月にサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)に僅差の判定で敗れたことで、より話をまとめやすくなった印象もある。まだ開催地、放映テレビ局の選定などに課題は残っているが、“日本ボクシング史上最大の一戦”はもう夢物語でもなんでもない。ただ……その一方で、“ブラント戦の勝利”というハードルがまだ残っていることも忘れるべきではない。


「ちょっと失礼だと感じているよ。村田個人から出てきている話ではないだろうし、彼が私を見過ごしているわけではないのもわかっている。それでも、(ゴロフキン戦の話ばかり出てくる)この状況はね」


 計量を終えた直後に尋ねると、日本人記者に気を遣いながらも、ブラントはそんな風に不満を述べていた。その口調からは、単なる引き立て役に終わるつもりはないという28歳のプライドがにじんだ。これもボクシング界ではあることだが、近未来のビッグファイトが話題になることで、挑戦者に新たなモチベーションを与えることにもなっているのかもしれない。

杉浦大介
杉浦大介
東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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