【バレー】「世界で戦える強い日本」になるために トップ4との差を埋める鍵は技術力の向上
荒木「どこかで勝る部分や要素を身に付けなければ」
世界のトップと言うべき相手との間に生じる差は何か。荒木(中央)は「技術」を挙げる 【坂本清】
「個の突破する力というか、たとえばラリーが続いた最後にハイボールが上がってきた状況で決め切る決定打を出す力。プロセスや精度はもちろんあるけれど、そこを決めるのか、フェイントで返すのか、(相手の)ミスにするのか、そのスキルがすごく大事だと思うし、何より私自身が一番、自分に技術がないことをよく分かっているので。
セルビアに圧倒されて、久々に『このレベルで戦わなきゃいけないんだ』と、あらためてハッとさせられました。全日本、東京五輪、メダルと言う以上、そこに向けて自分もチームもやっていかなきゃいけない。あの高さや角度はなくても、多彩さとか、どこかで勝る部分や要素を身に付けなきゃいけない、と感じました」
技術力向上は全日本の合宿期間だけでクリアされるほど簡単なものではない。長い国際シーズンが終わり、間もなく始まるVリーグや海外リーグで、選手たちがそれぞれ課題を掲げ、個々の技術力アップに取り組むことはもちろんだが、育成年代に至るまで、世界で戦える強い日本になるためにどんな技術が必要か。
レシーブやパスといった基本もさることながら、相手ブロックに対してどう点を取るか、という実践的スキルも含め、各々の利益だけを追求する勝利至上主義だけでなく、幅広い世代で未来を見据えた技術指導も不可欠な課題となるはずだ。
まだまだ足りない。
中田監督をはじめ、多くの選手がそう口をそろえるように、6位という結果に満足する者などいない。だが、横浜で幕を開けた1次ラウンドから振り返れば、中田監督が「粘りや日本の武器にしなければいけないディフェンスの部分では、この大きな大会で、格上のチームに対しても諦めずに食らいついていったところは評価してあげたいし、フロアディフェンスが機能したら、ある程度戦える可能性は感じた」と言うように、日に日に進歩を遂げ、敗れた中でも収穫があったのは間違いない。
実際に開幕前には大きく分けて2通りとされたメンバー構成のパターンも、長岡望悠の復調や古賀紗理那、黒後愛といった若手の成長など、複数の要素が加わり中田監督も「3つぐらいのオプションができて相手によって使い分けられるメドが立ったというところではチームの形という大枠は作れた」と成果を示す。
「ベスト6」ではなく「なぜ表彰台に上がれなかったか」
中田監督が就任して2年。あっという間だった、とただ振り返らないためにやるべきことは何か 【坂本清】
「ブロックの上から(イタリアのパオラ・)エゴヌのように打てるわけではないけれど、世界と戦うことに対しての違和感は徐々に薄れてきているのかなと。あの高さとパワーが当たり前で、そこからの点数の取り方をどう強化するか、という部分では日本独自のものを追及していかないといけない。
そこが世界との差なのか、と言えばちょっと分からないですが、トータルディフェンスが機能した時の日本はそう簡単に負けない。そしてサーブレシーブが返れば互角な戦いができるというのは再認識しました」
昨年はサーブレシーブやチャンスボールを低い軌道でセッターに返し、そこから速い攻撃を展開してきたが、今季は古賀や長岡、石井優希も「1本目は少しゆっくり、間を作ることを意識していた」と言うように、スピードばかりにこだわらなくなった結果、高い打点から伸びやかに打ち切り、得点につなげる場面も増えた。こうした結果も含め、サーブレシーブやパスも、何が本当に適しているのか。さらなる検証が求められるはずだ。
リオデジャネイロ五輪では予選敗退となったイタリアが決勝進出を果たし、トップ4の国々を筆頭に10代や20代前半の選手が主力として次々に台頭している。目覚ましい進化を遂げる世界に取り残されぬためにも、各々がそして組織として取り組むべきことは数えきれないほどにある。
「世界選手権でベスト6に入って良かった」ではなく、「なぜ表彰台に上がれなかったのか」。最終目標として掲げる2年後の東京五輪での金メダル獲得に向け、大きな課題を突き付けられた世界選手権が終わり、中田監督が就任してから、あっという間に2年が過ぎた。そして東京五輪までは2年を切っている。
あっという間だった、とただ振り返らないためにも、今やらなければならないことを見失ってはならない。