西武・秋山翔吾 ロングインタビュー 短期決戦は「勝ちゃいいんです!」
同級生のライバル・柳田への思い
チームをけん引する立場としてCS突破、日本一を誓う。個人としても同級生で共通点も多いソフトバンク・柳田らと切磋琢磨し、さらなる進化を遂げていく 【写真は共同】
もう少し欲を言えば3割5分くらい打ちたいですけどね。
――毎年3割5分打てたら首位打者を何度も取れますね。
でも、柳田(悠岐/ソフトバンク)が3割5分2厘ですから。そうなると、そこでも勝負できない可能性のある同級生がいるわけですよ。あいつはそんなにタイトルに執着がなくて、「俺はトリプルスリーがやりたい」とすごく言うんですよ。
――首位打者とかではないんですね。
そう。シーズンの途中くらいに、「アキ、おまえ今年3割4分ぐらいで首位打者取れるから、大丈夫。俺落ちるから」とか簡単に言うんですよ。
――そんなことを言ってくるんですか(笑)
僕は「負けたくない」というのが強すぎるのか、余裕がないのか分からないですが、やっぱり言えないですね、しかも競ってるやつに。身内にだったら多少こぼしたりはできるかもしれないですが、「当事者にそれ言う?」というくらい楽しんでやってるんだなという感じですね。切羽詰まってない。僕の方がカツカツに野球をやってますね。でもそのやり方じゃないと、僕はできないので。「そういうやつと勝負してるんだな」と思うと、刺激をもらって頑張れるんだな、と。ちょっと特別ですね、他の同級生の中でも。
――他にも同級生はたくさんいますが……。
すごい世代ですけど、同じリーグで同じ年のドラフトで、同じ外野手で……。
――順位も同じだったでしょうか。
あいつのほうが1つ上かな。2位だった。そういう意味では、1個くらい勝たないと「じゃあ何で勝負すればいいの?」ってやってますから。首位打者で負けちゃうとね、ちくしょうってなりますよね……(苦笑)。
――柳田選手に勝って首位打者を取ったときは格別の喜びになりそうですね。
そうですね。あと、フルイニング出場は自分の1個のステータスになっていますね。だから、休まない、ほかの選手をはめさせない。頑張れる時に頑張っておくっていうのは、気をつけていきたい。続けていきたいところですね。
いざポストシーズンへ「喜びが続くように」
リーグ優勝はしたので目標は一つ達成しましたが、まだ上を目指せる状況なので。日本一というのが、そのシーズンが終わったときにチームの歴史に残ることなので。もう信じられるものは信じればいいし、信じたい。最後は勝ちゃいいんです。結果残して引っ張ってやりますけど、それはもちろん見せますけど、最終的に何が残るかといったときに勝ちゃいいんです。
特にこのポストシーズン、クライマックス、日本シリーズは味わったことのない緊張感がそこにあると思います。負けたら終わり、追い込まれることも正直あると思います。相手が強いチームしか残りませんから。向こうに王手をかけられて、劣勢で6回まで来て、みんな打席があと1回で、この中でどうする? となったときに1年間チームとしてやってきたことが出る可能性があるので、そこの底力を、底力でなくても自分たちの力を出せるようにやります。やりたいです。
――ファンのみなさんにも勝ちゃいいと思ってもらうことはあっていいかもしれませんね。
シーズンでもみんな、なんだかんだ勝てばいいと思ってる人もいると思います。もちろん、内容にこだわる必要もあると思いますよ。いい内容で勝つのがベストですけど、それも簡単にはいかないし、ファンの人の一番の喜びは勝つことでしょう。
――間違いないです。
推しの選手が打っても負けたら喜びきれないじゃないですか。僕らが今年優勝して喜んでいるのは、勝ったからなんですよ。成績残している選手ももちろんいるし、悔しい思いもしているけれども、それをカバーしあって、やれたって実感があったのが優勝だというのを若手も味わったので。
ということは、勝つ喜びを知ったと思うんですよ。苦しくても勝つために何ができるかを探して、その時その時やることをやって得たものが優勝だったので。その喜びが続くようにやりたいですね。
(取材・文:加賀一輝/スポーツナビ)