1年目から結果が求められる与田新監督 どんな現状でも“優勝”の二文字を

ベースボール・タイムズ

選手に求める2つのこと

15日に就任会見を行った中日・与田新監督。6年連続Bクラスの低迷脱却は、かつてのリリーフエースに託された 【写真は共同】

「優勝、それだけを目指して戦っていきます」

 2019年シーズンから中日ドラゴンズの指揮を執る与田剛新監督は、就任会見で明確な目標を打ち出した。23年ぶりに復帰を果たした古巣は6年連続Bクラスと低迷の真っただ中。「もちろん不安な気持ちもある」と本音を隠さなかったが、「最後まであきらめずに、われわれがトップに行くという強い意識を持っていく」と揺るぎない信念を語った。どのような現状であっても、“優勝”の二文字を遠慮するような指揮官に期待を抱くことなどできない。

「勝つということは間違いなく必要。そこにファンの喜びが出るのは間違いない」

 勝利に飢えている竜党の心情を理解している新監督は、いかにしてチームを浮上させるのか。選手に求めたのは「取り組み方の見直し」と、「新たなスタイルの創造」だ。

「これまでの数年間は思い通りにならなかった。準備はしたけどうまくいかなかったというのは必ずある。みんな精いっぱいやってきたはずですから。なので、その内容をもう一度見直して、今勝つためにできることとして選手たちが新しいスタイルを生み出す。根本的な考え方を変えていかないと難しいと思う」

与田流の指導法は“粘着型”?

 努力の仕方が間違っているならば、正さなければならない。そして、選手のレベルアップにおいては指揮官をはじめとした首脳陣で選手自身が自覚していない魅力に気付かせる重要性を踏まえている。それらを実行するために、与田新監督がまず初めに自身に課したのは、選手個々の力量の把握。それは故・星野仙一氏の「選手が最優先。とにかくじっくり見ろ」という教えでもあった。

「生で選手を見てから、考えていこうかなと。実際、ここ3年間はドラゴンズの選手の印象はないですから。逆にそれが先入観のない中で選手を見られるので、それを信じてじっくり見ていこうと思っています」

 時に固定概念は新たな創造力の邪魔となる。例えば、先発投手として取り組んできた過去によってリリーフの適性を見逃しているのかもしれない。しかし、まっさらな見方ができる与田新監督によって新たなリリーフエースとなれるような存在を見いだすことができるかもしれない。

「今の時代と、今の選手たちの感性をしっかり見極めながら、選手たちに合った指導を見つけていきたい。僕と距離を取りたい選手には逆に近づいていこうかなと。嫌われても近づいていこうかなと思っています」

 与田流の指導法を表現するならば“粘着型”といったところか。情熱を持って選手の能力を高めていき、個々の力を集結させることで大きなチーム力へと変えていく。そんな与田新監督が描く新生ドラゴンズの戦闘スタイルは「常に攻める野球」である。

「ピッチャーが嫌がることを常に考えていく。ただ打つだけでなく、マウンドの上にいる相手投手のペースで考えさせない、動かさないということは常に考えて、プレッシャーをかけていきたい」

難題を“星野イズム”継承で解決?

 守備の面から攻めていき、攻撃においては投手心理を突いてプレッシャーをかけて攻め立てる。構想を語る上で最も意気揚々としていたのは、意外にも攻撃に関する話題だった。

 一方の投手陣に関して「まずはしっかり選手を観察してから」と慎重な姿勢を崩さなかったのは、やはりこのチームが抱える問題の大きさを表していたと見る。今季、38度の逆転負けと、チーム防御率4.36、ならびに救援防御率4.93の数字はいずれもリーグワースト。この難題を解決するためには、与田新監督に継承が期待されている“星野イズム”を今こそ実現する必要性に迫られたのかもしれない。それは「優秀なコーチングスタッフの招へい」と「大型トレードの断行」。いずれも星野氏が中日を強くした手法である。

 星野氏が投手王国を築いた第二次政権時代を振り返ると、宮田征典氏や山田久志氏といった実績のある投手コーチが存在。両氏はそれまで中日との縁はなかったが、実績と経験に裏打ちされた指導で投手力を上げていった。生え抜きの与田新監督が誕生したことから組閣も生え抜きでという風潮があるが、優先すべきは6年連続Bクラスの危機的状況の回避。生え抜き・外様にかかわらず、実力重視の登用に期待したい。

 また、星野氏は有意義なトレードの遂行でチーム力を強化してきた。最も有名な例はロッテ・落合博満に対し、牛島和彦、上川誠二、平沼定晴、桑田茂を放出した1対4の交換トレード(1986年オフ)。第二次政権でも、広いナゴヤドームに適した守備力と機動力の強化を図り、大豊泰昭と矢野輝弘に対し阪神・関川浩一、久慈照嘉をトレードで獲得(97年オフ)。いずれの補強も見事なまでにチーム力を上げてみせ、後に優勝へとつながった。“星野イズム”のすべてを紐解けているとは思わないが、本気でチームを強くして優勝へと導く執念がそれであるならば、与田新監督にもその本気度があることを願う。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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