日本ハムが経験した北海道地震「つなぎの野球」復活が日本一への鍵

ベースボール・タイムズ

9月5日、旭川スタルヒン球場で埼玉西武に勝利しハイタッチをする日本ハムナイン 【写真は共同】

 2018年9月6日、午前3時7分。北海道胆振(いぶり)中東部を震源とする最大震度7の地震が発生。震源に近い厚真町などでは犠牲者が多数出る被害、さらに主力の苫東厚真火力発電所が地震直後に停止し北海道のほぼ全域295万戸で数日間の停電禍に見舞われた。

 北海道日本ハムはその前日の5日、札幌から約140キロ離れた旭川スタルヒン球場でナイターゲームを行い、首位・埼玉西武に勝利。ナインはほぼ全員がその日のうちに約2時間かけて札幌市東区の宿舎や札幌市内の自宅に戻り、宿舎や自宅で被災した。

 宿舎では震度6弱を記録した。激しい揺れに飛び起きた選手たちは、各部屋から飛び出して無事を確認し合った。その後、チームのLINEグループに「生きています」というメッセージが並び、ほどなくして全員の無事が確認されたという。

当たり前のことができない不便さ

9月7日、札幌市内で調整をする上沢直之 【写真は共同】

 しかし、混乱はこれだけでは済まなかった。今回は主力発電所からの連鎖的停電だったため、復旧に時間がかかった。震災当日の6日の昼になっても信号機は消えたまま。震源にも近い新千歳空港は終日閉鎖という事態。実はこの日が次節・東北楽天戦の舞台、仙台への移動日だったのだが、空路が断たれて移動が不可能となった。

 そして、最も困ったのが練習場所だった。札幌の宿舎隣には室内練習場も併設されているが、当然電気はつかず、選手会長の中島卓也は真っ暗な中でランニングメニューをこなし、一部の若手の選手たちは車でジムへ向かって汗を流した。翌日先発予定の上沢直之は、宿舎脇の狭い中庭でキャッチボールをするのが精いっぱい。その夜は各選手が宿舎の広間で怪談などに興じ、電気のない一夜を明かしたという。

 その他の選手たちも、試合を行う以前の日常生活で不便さを痛感した。札幌に居を構える選手たちは、そのほとんどがマンション住まいで、電気が止まると揚水ポンプも動かないため水の確保にも困ったという。中田翔は、シャワーも浴びることができない我が子の体を拭いてあげ、宮西尚生は停電直後に車を走らせ、遠征時留守にする家族のため食料の確保に奔走。単身赴任中のマルティネスは、幸いにも同じマンションに住んでいたレアード宅でスパイシーな豚肉料理をふるまってもらい、難を逃れたそうである。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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