エネイブル、陣営の勝利で歴史的名馬に 日本馬の悲願は持ち越し=凱旋門賞
10戦9勝、G1は6勝目の大偉業
凱旋門賞の連覇でスーパーホースの仲間入りを果たしたエネイブル 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
エネイブルのJRAの海外馬券発売によるオッズは1.7倍の1番人気。短クビ差の2着に後方から馬場中央を追い込んだ3歳牝馬のシーオブクラス(3番人気、単勝6.3倍)、さらに3/4馬身差の3着にシャンティイ競馬場で行われた昨年の凱旋門賞で2着したクロスオブスターズ(9番人気、単勝56.8倍)、前哨戦のG2フォワ賞に勝って2番人気に推されたヴァルトガイスト(単勝6.2倍)は4着。
武豊騎手を鞍上に1番枠発走からエネイブルと雁行するように3番手を進んだクリンチャー(4番人気、単勝8.6倍)は勝負どころで瞬発力に勝る馬たちの後塵を浴びて後退。19頭立ての17着で入線し、悲願は来年以降に持ち越されることになった。良馬場の勝ちタイムは2分29秒24だった。
勝ったエネイブルは、これで10戦9勝。G1は英愛のオークスとヨークシャーオークスの欧州三大オークスに加え、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSと凱旋門賞連覇によって6度目の制覇。欧州競馬史に残るスーパーホースになった。
エネイブルはガリレオ直仔のナサニエル産駒で、2着、3着馬の父シーザスターズはガリレオの半弟。4着のヴァルトガイスト、先行して5着に残ったカプリはともにガリレオ直仔。1993年の凱旋門賞に勝ったアーバンシーを母に持つガリレオとシーザスターズ兄弟の血を色濃く受けた馬たちによる競演となった。
一抹の不安を残したスタート
管理するJ.ゴスデン調教師は「調教のようなレース」と振り返ったが、破竹の勢いで臨んだ昨年と異なり、能力上位に疑いはないものの、一抹の不安を残したスタートだったことは否めなかった。
L.デットーリ騎手にとってはひとつのミスが命取りになる重圧がかかったはずだが、凱旋門賞5勝の一流はまったく動じることなく逃げ馬を前に見てクリンチャーの外につける完ぺきな騎乗ぶり。残り400m地点で先頭に躍り出た昨年と異なり、今年は先を行った芦毛カプリを目標にゴールから300m地点まで追い出しを遅らせて、唸るように馬群を割って迫るシーオブクラスの鬼脚を封じた。
凱旋門賞はこれまで数々のスターホースを誕生させてきたが、エネイブルの歴史的勝利はJ.ゴスデン調教師、L.デットーリ騎手の偉大さを深く刻み込むことにもなった。
武豊クリンチャーは「想定通りの展開」も…
遠征のリスクを取って臨んだクリンチャー陣営だったが悲願は叶わず 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】
彼我の競馬に違いがあることいかんともしがたいが、血統や気性、走りっぷりからフランスの馬場に向くと判断して遠征というリスクを取ったクリンチャー陣営の挑戦は、たくさんのファンの支持を得た。いつか日本の馬が凱旋門賞を制した時に、積み重ねられた挑戦の意義が明らかになるだろう。
(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)
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