選手を守り、メッツを愛した広報の勇退 豪華会見にレジェンドたちが集結

杉浦大介

何があろうと選手を守り続ける広報

メッツの広報を39年間にわたって務めたホーウィッツ氏はチームを愛し、選手を守ってきた 【Getty Images】

 自らが手を染めた数々の悪事をジョークを交えながら述べたフランコは、スピーチの最後に「ジェイは選手のために戦ってくれた。どんなに悪い状況でも、最後までそばにいてくれる人だったんだ」と泣き崩れた。ホーウィッツが広報就任後のメッツは優勝経験は1度だけで、どちらかといえば低迷期の方が長かった。いいことよりも悪い時期の方が多く、そんなチームの広報の仕事は簡単ではない。それでもホーウィッツはチームを心底から愛し、たとえ不器用でも、何があろうと選手を守り続ける広報だった。

「ジェイはバージニア出身の少年にプロフェッショナルとはどういうものかを教えてくれました。彼は多くの役割をこなし、プロとしても、プライベートでも、僕の成長を助けてくれたんです。メッツ内で語り継がれるべき人物。常に僕たちの側にいてくれた。ここでの数分間のスピーチでは、彼への愛情は語りきれません」

 聡明な現キャプテン、ライトの言葉はホーウィッツの存在価値を物語っているのだろう。選手をプロテクトしようという姿勢がゆえに、メディアからは常に評判が良かったわけではない。過度に間に入ろうとしてくるおかげで、筆者も取材機会を難しくされたことは1度や2度ではなかった。メッツが複数の日本人選手を抱えてきた過程で、この広報を厄介に感じた日本メディアは他にも多かったに違いない。

 ただ……例えそうだとしても、1989年に水疱瘡を患ってから2011年に足首を骨折するまでの22年の間、一戦足りとも休まずにチームに付き添い続けた広報をリスペクトしないというのは難しい。愛がなければ40年も伴侶には付き添えない。メッツを誰よりも愛し、選手、スタッフからも愛された名物広報。ビジネスライクで新陳代謝の激しいMLBにおいて、こんな人物はもうなかなか出てこないだろう。だとすれば、18年9月12日はやはり一時代の終わりだったのかもしれない。(※文中敬称略)

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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