最下位クリンチャーに欧州馬の手荒い洗礼 フォワ賞Vヴァルトガイストは「JC向き」
先頭から約8馬身差のしんがり6着
武豊騎乗のクリンチャーはフォワ賞で最下位の6着、ここから巻き返しなるか 【Photo by Photostud】
凱旋門賞で最多7勝、“勝利の方程式”を知るベテラン
フォワ賞を快勝したヴァルトガイストは重賞4連勝、凱旋門賞へ大きく前進した 【Photo by Photostud】
ここに3頭を送り出したフランスの“皇帝”A.ファーブル調教師は今年も定位置のリーディングを独走するものの、この日の開催前までG1勝ちはヴァルトガイストのサンクルー大賞の1度だけ(フォワ賞の前に行われたヴェルメイユ賞を4歳牝馬のカイトサーフで優勝)。3歳世代もG1仏ダービーへ出走させる馬が1頭もいなかったようにエース不在でありながら地道に獲得賞金を積み重ねてきた。フォワ賞の結果は、この流れを変えた。厩舎の稼ぎ頭で秋に狙いを定めて順調なステップを踏んでいたヴァルトガイストが、期待を上回る走りを見せ、米国のG1ブリーダーズCターフ連覇を視野に入れるタリスマニックが2着に健闘。前年の凱旋門賞2着馬のクロスオブスターズも差のない3着(2着に短クビ差)と申し分のない結果は厩舎の巻き返しに火をつけたのではないか。
レース直後のファーブル調教師はいつものように表情を崩さなかったが、古馬トリオの好走が嬉しくないはずはなく、特にヴァルトガイストについては「この馬はジャパンカップに向いていると思う」というリップサービスまで飛び出した。凱旋門賞で最多の7勝をして“勝利の方程式”を知るベテランらしい余裕が感じられる言葉だった。
巻き返しに希望をつないだ武豊だが……
「叩き良化タイプ。次に期待したい」と武豊はこの敗戦にも前向き 【Photo by Photostud】
ノーステッキで馬群を交わし去ると鞍上が手綱を緩める余裕さえあったヴァルトガイストの成長には目を瞠(みは)る。昨年はG1仏ダービーでブラムトに短アタマ差の2着するなど、その潜在能力は誰もが認める馬だったが、シーズンが終わってみれば5戦して勝ち星なく2着3回で終了。心身共に幼さを残していたのだろうか。しかし、今年に入ってからの5戦は初戦のG2アルクール賞こそ5着だったが、5月のG3エドゥヴィル賞を皮切りに、6月のシャンティイ大賞、7月のG1サンクルー大賞、そしてフォワ賞と芝2400mの重賞ばかり4連勝。シャンティイ大賞では重馬場で後続を3馬身ちぎった。血統は父ガリレオ、母の父がモンズーンで、こちらも晴雨兼用を物語っている。長期予報は10月1週目のパリ地区に雨マークをつけている。当日馬場が悪くなった場合は昨年シャンティイの重馬場で1、2着したエネイブルとクロスオブスターズ、それに馬場が柔らかくなれば、と牽制球を投げるクラックスマンなどが強敵になるはず。雨はクリンチャーにも追い風となりそうだが……
(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)
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