“ゴロフキン絶対の時代”が終焉 歴史を動かしたカネロ、村田との対戦は!?

杉浦大介

もはや全盛期の力はないゴロフキン

ゴロフキン(左)のフィジカルに全盛期の力がないのは明白。もはや上がり目はないか 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 プロ40戦目にして初めて敗北を告げられた後、ゴロフキンは恒例となったリング上でのTVインタビューを受けぬまま控え室に戻った。道義を重んじる印象のゴロフキンらしくない振る舞いに落胆したファンも多かったのではないか。そんな姿は、キャリアの分岐点となるメガファイトを落としたショックの大きさを物語る。

「ジャッジはカネロが勝者と採点したのだから、今夜は誰が勝っていたか、などと言うつもりはない。ファンにとってとても良い試合で、エキサイティングだった。判定に文句は言えないが、私の方が良い戦いをしたと思った」

 敗れてもプライドを保ったゴロフキンだが、そのキャリアが黄昏時に差し掛かっていることは誰も否定できまい。依然としてハイレベルの技量を保っており、今夜はまずカネロをたたえるべきだが、それでもゴロフキンのフィジカルに全盛期の力がないのは明白。後半を待たずに疲労を感じさせた姿は、紛れもなく“36歳のファイター”のそれに見えた。

 この敗北で4団体統一の夢も、東京ドームでの村田諒太(帝拳)戦といったビッグプランもとりあえずは霧散。今後はカネロとのラバーマッチが見どころとなるが、来春には37歳になるゴロフキンにはもう上がり目はあるまい。長い時を経てビッグイベントにたどり着いたスラッガーは、結局は真のメガファイトでの勝利を経験できないまま表舞台を去ることになっても不思議はない。

カネロ対村田は実現するか

カネロにはよりネームバリューの高い挑戦者候補が数多く存在する。村田は相手として選ばれるくらいの試合を見せていく必要がありそうだ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 日本のファンにとっては、ゴロフキン対村田というドリームマッチがお蔵入りになる可能性が高まったことはやはり残念に違いない。試合後、帝拳ジムの本田明彦会長は“形を変えてのゴロフキン対村田戦はまだあり得る”と断った上で、今後はまずカネロ対村田の実現を目指していくと明言した。

「カネロ側から聞いているのは、カネロは12月にデビッド・レミュー(カナダ)対ゲイリー・オサリバン(アイルランド)の勝者とやるということ(編注:この日のアンダーカードでレミューが初回KO勝ち)。その後の来年5月はまたベガスでやるから、村田が良い試合を見せれば相手の候補になるよと。今後はカネロの相手として選ばれるようにどうしていくか。村田もカネロがやってもいいというくらいの試合を見せないと」

 米国のリングで現在最大の興行価値を誇るメキシカンスターに挑戦となれば、村田とその陣営にとってまた大きなチャレンジになる。カネロ相手では日本での興行は現実的ではないが、ベガスでの対戦も十分に魅力的に違いない。

 ただ、カネロにはよりネームバリューの高い挑戦者候補が数多く存在するゆえに、実現に向けてのハードルはゴロフキン戦よりもはるかに高い。たぐり寄せるためには、実力、人気、タイミングの良さなど、さまざまな要素が必要になる。まずは来月20日にラスベガスで予定されるロブ・ブラント(米国)との2度目の防衛戦で、村田はカネロ、ゴールデンボーイ・プロモーションズ、メキシコ人ファンを振り向かせるだけのパフォーマンスを見せられるかどうか……。

 歴史的な王者の牙城が崩れると、さまざまな場所に影響が及び、多くのプランが変更を余儀なくされる。2010年以降は絶えずチャンピオンであり続けた巨星が敗れた今回も例外ではあるまい。ミドル級戦線における“ゴロフキン絶対の時代”は完全に終焉――。今後はカネロを中心とするストーリーが本格化し、村田を含む周囲の惑星たちも新たな方向性を模索することなるのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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