投手二冠に突き進む広島・大瀬良大地 「いい人」から「頼もしい」エースへ

ベースボール・タイムズ

勝利数と防御率でリーグトップ

5年目の今季、広島の主戦として投げ続ける大瀬良。投手タイトルだけでなく、沢村賞やMVPの候補にも挙がっている 【写真は共同】

「エースというのは周りの人が決める事」

 8月25日の中日戦で、入団時から目標としていた自身の背番号と同じ14勝目をマークした大瀬良大地は、取り囲む記者にそう答えた。2013年のドラフトで3球団競合の末、広島が引き当てた大学ナンバーワン右腕は、1年目から10勝をマークして新人王を獲得したが、その後はチーム事情からのリリーフ転向や故障などで、必ずしも順調とは言えないプロ生活を送っていた。

 だが、今季は9月9日時点で23試合に先発して15勝6敗、防御率2.37。勝利数と防御率は2位以下を引き離し、自身初の投手タイトルだけでなく、沢村賞やリーグ優勝をほぼ確実とするチームのMVP候補にも名前が挙がる。故障や不振などで先発陣が苦しむ中、開幕からローテーションを守り続けているのは、大瀬良と岡田明丈だけ。一昨年は野村祐輔、昨年は薮田和樹がクリアした15勝にも到達し、残り試合で一昨年の野村が挙げた16勝を超える勝利数が期待される。

 大瀬良の言う周囲の評価も、勝ち星を積み重ねるたびに、着実に上がっている。交流戦の期間中、各チームの視察で広島を訪れた侍ジャパンの稲葉篤紀監督は「今年は堂々としていて、自信を持って投げている感じがある。主力投手としての自覚が出てきたと緒方(孝市)監督も言っていた」と、広島投手陣の中で唯一、大瀬良の名前を挙げ、代表選出の可能性も示唆した。

自己変革と新井からのアドバイス

 飛躍の要因は、昨オフからの自己変革にある。

 技術面では、投球フォームの見直しを行った。本人が「動画オタク」と言うように、動画サイトで時代やチーム、日米などに関わらず、さまざまな投手のフォームを見るのが趣味だという。「どんな体の使い方をしているのかを見て、自分に合うと思うものは取り入れてみる」という大瀬良は、昨季はかつてのチームメイトで師と仰ぐ黒田博樹の投球フォームを参考にし、体重移動の際の股関節の使い方を学んだ。

 自身2度目の2ケタ勝利をマークした昨季からのさらなる飛躍のため、昨オフに取り組んだのが、投げる際の左手の使い方の改良だった。「前よりも少し高く上げることで、反動を使えるようになり、上半身が突っ込むことも少なくなった」と、成果は絶大だった。さらに足を上げる際、一度タメをつくるような形の二段モーションも取り入れた。今季からの二段モーションについての規則改正が行われたこともあっての導入で、「軸足にしっかり体重を乗せることを意識しやすくなった」と、ルール変更も追い風にした。

 今季限りで引退の決まったベテランの助言も生かした。

「黒田さんを交えて新井(貴浩)さんと食事に行った時、野手目線からの話をしてもらった。具体的には、守っている立場から言えば、投球テンポを変えた方がいい、と。確かに昨年まではテンポが悪かったし、カウントを悪くすることも多かった。このアドバイスを頭に入れて、今年はストライク先行でいけている」

 野手のリズムが良くなれば、投手にも好循環になることは言うまでもない。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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