カープ芸人が送る惜別のメッセージ「新井さんに最高のフィナーレを」
2016年、25年ぶりのリーグ優勝を決めて黒田と抱き合う新井 【写真は共同】
どうして…いろいろな思いが駆け巡った
「広島カープの新井貴浩選手(41)が今シーズン限りでの引退を表明」
書いてある意味が、よく理解できなかった。カープの新井さんが、あの新井さんが引退? つい先日も東京ドームの巨人戦(8月29日)で逆転スリーランを打ってたじゃないか。誰よりも全力で走っていたじゃないか。まだまだ全然できるじゃないか。なんで、どうして……そんな考えが頭を駆け巡った。と、同時に引退がテレビ速報で流れる広島の特殊な土地柄に戸惑いを隠せなかった。
これほど長い期間にわたって心を動かされた選手がいただろうか。これほど幅広いファンに愛された選手がいただろうか。目をつぶれば見えてくる新井さんの豪快なホームラン、豪快なゲッツー、そして護摩行。もう護摩行を世に広めたのは新井さんなのではないかというほどに、まったくの異分野にも多大な影響を与えた新井さん。
そんな新井さんはわれわれカープファンの希望だった。カープの4番・江藤智さんがFAで巨人に移籍し、失意のどん底にいるわれわれに「新たな右の大砲」というロマンを見せてくれた。金本知憲さんが阪神へと去り、われわれがほぼ死んだ状態になった時も「新たな4番」として勇気を与えてくれた。いくらエラーをしても、ホームランを打ったディアスに追い抜かされてホームランを帳消しにしてしまっても(ディアスのホームランをレフトフライと勘違いした一塁走者の新井がハーフウェーから一塁に戻ってしまい、ディアスとすれ違ってしまった事件)、僕は新井さんが大好きだった。
そう、あの日までは……。
阪神への移籍での記者会見以来、新井さんの成績はなるべく見ないようにしていた。活躍なんて微塵もして欲しくなかった。ほとんどのカープファンがそうだったのではないかと思う。しばらく経つと新井さんのことはどうでもよくなっていた。ちょうど時を同じくしてカープは暗黒期と呼ばれる時期に突入しており、恨みどころではなかったのだ。
そして時は流れて2015年。新井さんはカープに復帰した。人の感情というのは不思議なもので、あんなに顔も見たくないと思っていた新井さんの帰還を心待ちにしている自分がいた。春のキャンプで久々のカープユニホームをお披露目に出てくる時、チャックを上げながら出てくる姿を見て、もうすでに心をつかまれてしまっていた。
カープに帰ってきてからの新井さんの活躍は誰もが知っているところだ。今やカープの顔どころか広島の顔に。そして絵本にすらなっている新井さん。そんな新井さんが今季で引退してしまう。
僕は仕事柄、カープ関係者の方に会う機会を多く頂く。いろいろな方にお会いし沢山のお話を聞くのだが、どんな方からも新井さんのお話を聞くことが多い。そして新井さんの話をするときは誰もが笑顔になる。