吉田輝星をドラ1候補へ押し上げた投球術 韓国相手に手痛い一発も収穫有り

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初球148キロも…4番に3ラン

韓国打線を6回2安打に抑えた吉田だが、立ち上がりの一発に泣いた 【写真は共同】

 2大会連続6度目のアジア一を目指すU18侍ジャパンは4日、サンマリンスタジアム宮崎で「第12回 BFA U18アジア選手権」1次ラウンドA組3戦目の韓国戦に1対3と敗れ、A組2位で各組の1位、2位が集うスーパーラウンドに進むことになった。

 18時3分、サンマリンスタジアム宮崎を埋めた1万2千人の観客から拍手を浴びる中で、今夏の甲子園で主役だった吉田輝星(金足農)が大会初のマウンドに上がった。大事な一戦の先発を告げられて、「よっしゃあという気持ちだった」と気合十分。「完投はないと思ったので全力で飛ばそう」と、初球のストレートがいきなり148キロを記録して球場も大きくどよめいた。

 先頭打者をサードゴロに打ち取り、出だし快調かと思われた。しかし、2番打者に10球粘られて四球を与えると、3番打者はスライダーでショートゴロに打ち取るも、名手・小園海斗(報徳学園)がボールをはじくエラー。続く4番の初球、「軽率だった」とカウントを取りにいったスライダーをレフトスタンドへ運ばれた。

ストレート粘られ変化球を多投

 あっという間の3失点だったが、ここで崩れないのが吉田の真骨頂。初回に28球を費やしたが、終わってみれば、6回を投げて95球、2安打、5奪三振、2四球、3失点。2回以降出した走者はセーフティバントによる内野安打1本、1四球、2つのエラーによる出塁のみ。「後半は自分のピッチングをしっかりとできたので、自分の力も通用していた」とほぼ完璧に抑えた。

 2回以降の踏ん張りは、変化球の使い方にあった。当初はストレートで押して変化球というコンビネーションを考えていたものの、ストレートが粘られていたことと、打者が踏み込んでくるのを見て、インコースへ斜め軌道のツーシームを多投した。「ホームランを打たれたので横変化からタテ変化に変えた。思った以上にタテに落ちた」というスライダーやフォークも駆使。初回は28球中17球がストレートだったが、2回以降は5割以上が変化球だった。

「勢いのなかった」ストレートにも工夫

 さらに、2度149キロを計測したものの、「勢いがなかった」と感じていたストレートにも工夫があった。「140キロ前半でカウントが取れれば、それが限界だと相手が思っていても、追い込んだときにそれ以上のボールが来るのでバッターは嫌な感じになる」と吉田。軽く投げる140前半のストレートでカウントを稼ぎ、追い込んでからは10割のストレートと1打席の中でギアチェンジ。スピードだけではない投球術で、前日の香港戦で41得点を挙げた韓国打線から凡打の山を築いた。

 また、走者を出したあとのセットポジションでも韓国を翻弄。一塁走者を顔だけで牽制し、クイックでホームへ投球。韓国走者がだまされて思わず一塁に戻ってしまうシーンがたびたびあった。今夏の甲子園でも投げるだけではなくピッチャーとしての総合力に高評価を得て、ドラフト1位候補へ浮上した吉田のテクニックが光った。

「次は絶対抑えたい」とリベンジ誓う

 ライバル韓国に痛い敗戦を喫したとはいえ、吉田にとっては大きな収穫も得た一戦。「次こそはチームを救うピッチングをしたい」と前を向く。

 この日、イニング間の投球練習で抜けていたため「怖くて使えなかった」カーブも調整次第では今後の有効な武器になる。「空振りが取れた」と手応えを感じた同じ軌道で変化の違うツーシームやフォークを使い分け、ストレートも140キロから150キロ前後で強弱をつけ、カーブでさらなる緩急をつけられれば、この日以上のピッチングが期待できる。

 決勝で再び韓国と対戦する可能性を問われた吉田。「絶対投げて次は絶対抑えたい」と力強くリベンジを誓った。
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