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大谷らしさが見えなかった復帰登板
「出力が上がって」ボールに影響か
88日ぶりの先発マウンドとなった大谷だが、3回途中で降板した
88日ぶりの先発マウンドとなった大谷だが、3回途中で降板した【Getty Images】

 9月2日(現地時間)、エンゼルス・大谷翔平は普通にクラブハウスに入ってきた。入り口に居合わせた日本人メディアに「お疲れ様で〜す」と言いながら。


 他にも選手と一緒に入ってきたので、大谷はバスで来たのだろうか。通常、その日の先発投手は独自スケジュールが認められている。遠征先であっても一人で球場に、ということが多いが、そもそもピリピリとした雰囲気を漂わせることもない。


 大谷はいつも自然体である。


 しかし、この日は88日ぶりの先発。アストロズ戦のマウンドに上がると、そんな大谷でもさすがにいつもとは違った。

久しぶりにマウンドに上がった影響

「思ったよりも緊張していたかな」


 初球、いきなり97.5マイル(約156.9キロ)を記録。いつもなら徐々に球速を上げていく大谷にしては、珍しく力が入った。2死一、二塁のピンチでタイラー・ホワイトを迎えた場面では、2球目に99.3マイル(約159.8キロ)をたたき出し、カウント3−1からの5球目も98.1マイル(約157.9キロ)をマーク。それは決して力でねじ伏せにかかったわけではなかった。


「そんなに力を入れるつもりはなかったんですけど、人(観客)が入っていて、こういう上(メジャー)の舞台で投げるということで勝手に出力が上がってしまった」


 らしくないと言えばらしくないが、そんなシーンは他にもあった。


 2回、先頭のマーウィン・ゴンザレスのワンバウンドでセンターへ抜けようかという打球を素手で捕りにいった。これには、大谷自身が驚いた。


「あんまり(手を)出したことはなかったので、自分でもびっくりした」


 やはりいつもの大谷ではなかった。

負傷前とは異なる軌道の変化

 意図せず力が入ったことに加え、打球に対して手を出したことが、降板の直接の原因となったが、その点については後で触れるとして、大谷が、「それなりにいいボールはあった」と振り返った通り、球質そのものは、これまでとは違うという点で見れば、確かに悪くない。


 決して4シームの回転数が高くない(故障前の平均は2169回転。今回は2158回転。2018年のメジャー平均は2262回転)のは相変わらずだが、回転数だけでは球質が判断できないのは、すでに知られるところ。要は、縦横の動きがどうか。


 縦の動きをホップ成分、横の動きをシュート成分と呼ぶ。それは、国学院大准教授で投手の投球動作解析を行っている神事努氏に倣ったもので、解釈は下記サイトに詳しいが、以下に2日までの10試合のデータをまとめたところ、こういう数字となった。

左がホップ成分、右がシュート成分(単位はセンチ)

4月1日:39.0、20.4

4月8日:43.0、15.2

4月18日:43.6、16.8

4月24日:38.1、14.9

5月6日:39.6、12.5

5月13日:39.6、17.1

5月20日:41.5、18.3

5月30日:38.7、15.8

6月6日:42.1、15.5

(故障前の平均:40.6、16.3)

9月2日:41.1、11.9

(参照:baseballsavant.mlb.comのデータを元に作成)


 これを見ると、ホップ成分は大きく変わらないものの、シュート成分がこれまでで一番小さい。4月に一度対戦しているアストロズとしては、軌道の変化を感じたのではないか。


 具体的な解釈は、もう少しサンプルがそろった段階で改めて試みたいが、以前対戦した打者には、カットボールと映ったかもしれない。

丹羽政善
1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米し、インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行っているほか、NHK BS−1で放送されている「ワールドスポーツMLB」にも出演している。

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