柴崎岳、ボランチとしての序列は4番手 ヘタフェ監督の言葉から見る厳しい現状

工藤拓

出番が与えられない現状から考える「2つの解釈」

柴崎の置かれている現状に関しては、2通りの解釈ができる 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 それでも限られたボールタッチの機会ではミスなくパスをつないでいたし、決して他のチームメートより出来が悪いわけではなかった。それだけに、その後の2試合で全く出番が与えられなかった理由については、2通りの解釈ができる。

 1つは、この時点でまだ移籍する可能性が高かったため、起用しなかったという解釈。この場合、レアル・マドリー戦の先発起用については、柴崎に興味を持つクラブへのアピールだったと考えることができる。

 もう1つは、単純に他の選手たちの序列が上だという解釈だ。

 真相が前者であれば、残留が決まった今後は状況が一変する可能性がある。だが後者であれば話は別だ。

 第2節エイバル戦、第3節バリャドリード戦共に、ボルダラス監督は同じ先発メンバーで戦っている。システムは4−4−2。ボランチはアランバリとマクシモビッチ、サイドMFはドリブラーのイバン・アレホとパサータイプのフランシスコ・ポルティージョが先発し、スピードに長けるアマトが2試合共にアレホに代わって途中出場している。2トップはアンヘル・ロドリゲスとマタでスタートし、ベテランのホルヘ・モリーナがやはり2試合共に勝負どころで投入されている。

 3つ目の交代枠は試合状況によって使い方が変わっている。エイバル戦では1−0でリードしていたゲーム終盤にアンヘルを下げて左サイドバックのレアンドロ・カブレラを投入し、後方の守備を固めて逃げ切りを図った。押し込みながらスコアレスの状況が続いていたバリャドリード戦では、ストライカーのセルジ・グアルディオラが残り7分の時点で起用されている。

選手補強により、ボランチでの出場はさらに遠のく

ボルダラス監督(左)の言葉からは、柴崎の置かれている現状が読み取れる 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 早くも13人の主力メンバーが固まりつつある中で、ボルダラス監督は柴崎をどのように使うつもりなのか。バリャドリード戦後の会見でそう問われた指揮官は、次のように答えている。

「現状マクシモビッチとアランバリがプレーしているのは、彼らの方が良い状態にあると考えているからだ。ガクもよくトレーニングしており、いつでもチームに貢献してくれると期待している。彼はボランチやサイドMFなど、いくつものポジションでプレーできるが、最も適しているのは4−3−3や4−1−4−1のインサイドMFだ。今は2トップ、2ボランチのシステムで戦っているが、彼は必要とされる時に備えてトレーニングに励んでいる」

 この言葉からは、ボルダラス監督が4−4−2における柴崎のポジションはボランチだと考えていること、そして現時点では柴崎が最適なポジションでプレーできるシステムの採用を考えていないことが読み取れる。

 しかもクラブは今夏を通してボランチの補強に奔走(ほんそう)し続けた末、8月31日の夜にフィオレンティーナからセバスティアン・クリストフォロを期限付きで獲得した。けがに泣かされたものの、20歳でセビージャに引き抜かれたウルグアイ人MFは、特に守備面でのハードワークが特徴の選手だ。アランバリやベルガラが同様のタイプであることを含め、この補強はボルダラス監督が、このポジションに何を求めているかを物語っている。

 クリストフォロが加わり、間もなくベルガラも復帰してくる今後、柴崎のボランチでの出場はさらに難しくなるだろう。また前線に4人のストライカーをそろえた今季は、昨季のようにセカンドトップとしてプレーする機会も減りそうだ。そう考えると、現実的には最も手薄なサイドMFで、タイプの近いポルティージョとの併用に落ち着くのではないか。

 いずれにせよ、これらの現状分析は全て無駄骨に終わる可能性がある。先に述べた通り、残留が決まった今後は、状況が一転するかもしれないからだ。

 ヘタフェの次節は9月16日のセビージャ戦。2週間の中断期間を経て、うれしいサプライズが見られることを期待したい。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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