村田諒太が米国で防衛戦を行う理由 日本史上最大の試合への“分かれ道”に

杉浦大介

WBAの指名挑戦者との防衛戦に決定

村田諒太の次戦が決定。紆余曲折をへて、WBA指名挑戦者のロブ・ブラントと対戦することが発表された 【写真は共同】

 紆余(うよ)曲折をへて決まった村田諒太(帝拳)の対戦相手は、適切な選手だったのだろう。

 8月30日、東京都内で行われた記者会見で、プロボクシングのWBA世界ミドル級王座を保持する村田の2度目の防衛戦の要項が発表された。10月20日(現地時間、以下同)、米国ラスベガスのパークシアターで迎え撃つのはWBAの指名挑戦者ロブ・ブラント(米国)。アマ全米王者の肩書きを誇り、プロでも23勝(16KO)1敗の戦績を持つ右ボクサーファイターである。

「非常に攻防がまとまっていて、KO率も高くて、良い選手だという風には考えています。何よりWBAの指名挑戦者ということで高い評価をいただいているみたいなので、それをクリアすることでまた次につながる」

 今戦をストリーミング中継するDAZN(ダ・ゾーン)によって全世界に生配信された会見で、村田は挑戦者についてそう述べていた。

村田の力を測るのに適切な挑戦者

ブラントは23勝(16KO)1敗の戦績を持つ右ボクサーファイター 【Getty Images】

 ボクシングマニアを自称する村田の言葉通り、スケール感こそないものの、ブラントはなかなかの好選手ではある。敗戦は1階級上のスーパーミドル級でワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)に出場し、元WBA、WBO世界ライトヘビー級王者ユルゲン・ブレーマー(ドイツ)に体格負けした1敗だけ。そもそも底力がなければWBSSに抜擢(ばってき)されるはずもなく、実力はアッサン・エンダム(フランス)、一時は今回の対戦相手になると目されたジェイソン・クイグリー(アイルランド)より上だろう。

 中西部での試合が多いがゆえにファンベースは存在せず、スタイル、キャラクターともに地味なこともあり、米国内でもトッププロスペクト(若手有望株)と目されてきたわけではない。WBSSで敗れた後、1戦こなしただけでWBAのミドル級指名挑戦者になったプロセスにもかなり疑問は残る。ただ、だからと言ってブラントに能力がないわけではない。村田にとって初めてとなる米国での防衛戦で、その力を測るリトマス紙的なチャレンジャーとしては適切ではないか。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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