菊池雄星、ソフトB相手に0勝13敗 負けは負けでも光明をつかんだ一戦

中島大輔

ソフトバンク相手に13連敗となった菊池雄星。それでも今季初完投で手応えを得た一戦となった 【写真は共同】

 ヤフオクドームの地下通路から宿舎へと引き上げる途中、埼玉西武の菊池雄星は歩を進めながら第一声を絞り出した。

「悔しいです。むちゃくちゃ悔しいです」

 8月24日、2位の福岡ソフトバンクと8ゲーム差で迎えた一戦は、初回に今宮健太に先頭打者本塁打、3回には柳田悠岐にツーランを浴び、今季初めて完投を記録しながら敗れた。これでソフトバンク戦は通算18戦で0勝13敗、またしても初勝利をつかむことはできなかった。

 とりわけヤフオクドームのマウンドがフィットせず、最多勝&最優秀防御率の二冠に輝いた前年でもストレートのスピードが10キロ近く落ちたほどで、まさに鬼門と言える球場だ。今季はオープン戦の頃の寝違いで調整が遅れ、夏場に入っても思うような投球を見せられていない現在、菊池はどんな意識で因縁のマウンドに登ったのだろうか。

出来は上々も…悔やまれる2本塁打

「本当に前週からブルペンも良かったですし、自信を持ってマウンドに立ちました。実際、いいボールも行っていましたけどね。やっぱり試合を決めるのは長打なので、それを防げなかったから負けたということだと思います」

 実際、菊池の出来は上々だった。辻発彦監督が「今シーズンで一番良かった」と振り返ったように、最速155キロのストレートは球威があり、チェンジアップは抜けが良く、スライダーは回を追うごとに鋭さを増していった。4回以降は振り逃げとエラーの走者しか許さなかったほどである。

 それだけに、2本の本塁打が悔やまれる。今宮の先頭打者弾は初球のストレートを狙い打たれ、柳田には外角低めのスライダーをバックスクリーン右に弾丸ライナーを突き刺された。柳田自身が「難しいボールだと思いますけど、反応にすべてを任せて。もう1回やれと言われても無理だと思う」と振り返ったように、打った側をほめるべき一打だが、菊池はそうは考えなかった。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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